人気VTuberの活動自粛、中国での配信で「台湾」発言原因か ローカリティの難しさが露呈
バーチャルYouTuber(VTuber)事務所・ホロライブを運営するカバー株式会社が、所属タレントである赤井はあとさん、桐生ココさんの活動自粛を発表しました。 【画像】炎上してしまった人気 VTuberの桐生ココ、赤井はあと 活動自粛の理由について同社は、ホームページにて公表した文書の中で、「機密情報である自身のYouTubeチャンネルの統計データの開示」「一部地域に在住の方に対する配慮に欠けた発言」があったためと説明。 「今後はより注意深く所属タレントへの指導と再発防止に対応し、ファンや関係者の皆様に信頼していただけるよう精進」していくとしています。 赤井はあとさんは24日、桐生ココさんは25日にそれぞれ自身の配信でYouTubeアナリティクスの統計データを公開しており、そこで「上位の国」として「台湾」が表示されたことが原因と見られます。
配信内容についてbilibiliでの同時配信にトラブルか
カバー株式会社は、2019年1月より、VTuber事務所としては初めて中国の動画サイト「bilibili」と契約をしており、ホロライブ所属VTuberの公式チャンネルの開設など、中国での活動を本格的に開始しています。 bilibiliでの活動には、現地ボランティアの協力でYouTubeで公開された動画へ中国語字幕を付しての転載、ライブ配信のYouTubeと同時配信などが含まれています。 なお、この8月には、YouTubeチャンネルをランク付けするサイト「Playboard」の発表によると、世界中のYouTubeチャンネルのスーパーチャット課金額ランキングで、桐生ココさんが1位に。国内外での高い人気を表しています。 今回、問題になった2人の配信についても、YouTubeだけではなくbilibiliでも放送。bilibiliの方では、配信中に放送権が剥奪されるトラブルが発生していました。 この件に関して、カバー株式会社は27日「弊社所属タレントの配信内の一部言動に対する問題につきまして」と題された文書を公開。またbilibiliにも同様の文書を公開しており、こちらには「日中共同声明」や「日中平和友好条約」に言及するなど、bilibiliの属する中国の政治的立場に配慮した記述が見られます。 文書では今回の件について「故意ではなく当人達の意図していない状況ではありましたが、公にしていない情報の開示やナショナリズムの配慮に欠けた言動」であったとして、3週間タレント活動自粛とガイドラインの実施をおこなうとしています。 文書内にある「ガイドライン教育・強化の最中に発生した問題」という記述については、bilibiliでの同時配信を巡る中国周辺の国際問題の取り扱いについて、ホロライブでは6月にも同様のトラブルが発生しており、「今後同様の問題を避けるために、コンプライアンスに対する教育や研修を進める中で、中国に関する知識の教育も行なってまいります」との声明を発表しており、これが関連するものと見られます。 編集部注:中国は、台湾を独立国家ではなく中国の領土の一部とする「一つの中国」という原則を掲げている。そのため、中国のサービスである「bilibili」上の配信において「台湾」と表示されたことが問題視されたと見られる。カバー株式会社の公開したbilibili向けの声明文でも、「一つの中国原則を断固として支持する」という中国語が記述されている この対応を巡っては、中国ファンや台湾ファン、日本ファンをふくめて、賛否が渦巻き、大きな波紋を呼んでいます。 赤井はあとさんや桐生ココさんを擁護する声もあり、意図せずYouTubeの統計データを表示してしまったことで3週間の活動全面停止という措置について疑問視する声も多い印象です。 今回問題となった巨大な市場を有する中国語圏以外にも、9月から英語圏向けのVTuberグループとして「ホロライブEnglish」を設立するなど、日本語圏を飛び出して活躍の場を広げるホロライブ。 今回のトラブルは政体・政治的立場の異なる地域でのビジネス展開の難しさを表したものと言えそうです。 現在、問題となった配信のアーカイブは赤井はあとさんのものは非公開。桐生ココさんのものは問題となった部分に編集が施され公開されています。
ゆがみん