粉飾決算に手を染めていた不動産会社、コロナ禍で倒産の顛末
デザインハウス東京は、地場の不動産業者などを主な得意先に抱え、世田谷区の若林・三軒茶屋など城西地区を主要営業エリアに、マンションおよび戸建住宅の販売を行っていた。特に近年は中古の戸建て物件を買い取った後に更地にして建売業者や個人に販売する形態で、1件あたり数千万円から1億円強程度の案件を年数件のペースで取り扱い、2017年5月期には年売上高約6億6000万円を公表していた。 しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴って、情勢は一変する。戸建ての売却が大幅に減少し市場が停滞したことで、取引機会の減少や取得価格の上昇を招き、土地の仕入れが著しく困難となった。また、いわゆるウッドショックの影響による建設資材高騰も、相対的な土地販売価格の抑制につながり、利益率の低下を招いていた。 資金繰り確保のためセーフティネットやコロナ特別融資などで5000万円を超える借り入れを行ったが、不動産取得のためのプロジェクト融資もあることから借入金負担は増す一方となってしまった。また、プロジェクト融資を得る目的で、過年度より架空の売上高や実在性のない固定資産の計上といった粉飾決算に手を染めていたことから、金融機関への支援要請も断念せざるを得ない状況となっていた。 業態特性もあるが、借入過多と粉飾決算で、気づいたときには身動きがとれない状況に陥った同社。結果論にはなるが、早い段階で金融機関や専門家へ相談することでハードランディングを極力避けられるような結末を迎えることもできたはずだ。 政策的に、金融機関は貸付先との伴走を求められており、事業再生が難しい場合でも各種私的整理制度などを活用することで、ステークホルダーや地域経済へのダメージを軽減できる可能性がある。業容縮小期の事業運営において、金融機関への早期の相談と連携は必須事項であろう。
帝国データバンク情報統括部