「熱いものを飲むとノドが痛い」その後、15時間の手術を受けることに 多くの病を抱えながらも屈強に今を生きる理由とは
NPO法人がんの患者学研究所
先が見えない状態だった織田さんがたどり着いたのは「NPO法人がんの患者学研究所」という、がん患者団体でした。そこで織田さんは、がんの原因になる食習慣や生活習慣、ストレスについて知り、再発予防策として徹底的に生活を見直します。 「とにかく健康にいいと思えることはすべてやった」と話す織田さん。特に意識したのは運動と睡眠、そして体を冷やさないことでした。 筋トレやランニングを毎日2時間ほど行い、夜は10時就寝、朝5時に起床という生活習慣に変えました。 会社を辞めたことで食生活も一変。サラリーマン時代は食品担当だったため接待が多く、おいしいものを食べ、お酒も浴びるように飲んでいたという織田さんは、お酒をやめ、現在まで玄米菜食を5年以上続けています。 生活スタイルを大きく変えるためには、パワーが必要です。織田さんはこのとき「生きる覚悟と死ぬ覚悟を同時にした」と話します。 「自分らしい生き方」をして「自分を好きになる」と決め、人間関係を断捨離した結果、ストレスも激減。身体とこころが大きく変わり、少しずつ再発への恐怖や不安がなくなったといいます。 「どうせ死ぬなら、それまで自分らしく生きて悔いを残さず、これはこれでいい人生だったと笑って旅立ちたい」という織田さん。 がんばって乗り越えたという意識は持っておらず、今の状態を俯瞰的に見て考え方と意識を変えたことで「がん」という岩石の向こう側に行く抜け道を探し当てたという感覚だといいます。
食道がんを克服した織田さんを襲う失明の恐怖
現在織田さんの視野は、中心部を残しその他の部分は黒く見える緑内障末期の状態です。 正常な視野を100%、完全に見えない状態を0%とすると、織田さんの視野は右目が24%、左目は8%で歩行には白杖が必要。車の運転はできません。 食道がんが見つかる前から緑内障の治療をしていた織田さんでしたが、がんが見つかり5年後の生存率が20%とわかったことで「生きているうちに失明ということはないだろう」と通院と点眼をやめました。 その後、令和4年の2月に視野が黒くなり受診したところ、緑内障末期と診断されたのです。失明する可能性と隣り合わせの中で生活する織田さんですが、緑内障の治療をしなかったことを後悔することはないといいます。 「緑内障はこれまで生きてこられたからこその副産物。がんの経験を通して、いつか見えなくなることに不安や恐怖を感じるより、見えている今をどう生きるかに焦点を合わせて今を楽しむことにしている」そう話します。 いつか失明するということを受け入れ、できることを今から増やし、見えなくなったときにどうしたら人生を楽しく生きられるかを視野に入れて生活しているといいます。