地元ガイド「雪崩起きやすい条件」/八甲田・スノボ女性死亡
21日、青森市の八甲田スキー場のコース外で発生した雪崩は、近くを滑走していた女性スノーボーダーの命をのみ込んだ。複数の現地ガイドらは、現場近くの古い積雪の上に降り積もった新しい雪が滑り落ちる「表層雪崩」が発生したと推測。さらに現場は「モッコ沢」と呼ばれる沢の中にある木々のない斜面だったとみられ、前日の気温も含めて雪崩が起きやすい条件が複数そろっていた可能性がある-と指摘した。 複数のスキーガイドによると、現場付近は事故前日の20日は比較的暖かく、雨やみぞれが降った。八甲田ロープウェー山頂公園駅の20日の気温は氷点下4.2度(午前7時時点)で、21日の同時刻より4度ほど高かった。20日の暖気や雨でいったん緩んだ雪が、その後の冷え込みで固まり、その上に10センチ程度の雪が降り、雪崩を誘発する「弱層」ができたとみられる。 搬送に加わった八甲田ガイド連絡会の相馬浩義会長(60)によると、一般的に木々のある斜面は雪崩が起きにくいが、現場付近は林のない急斜面だった。「沢の地形は風に流された雪がたまって積もり、雪面が不安定になる。雪崩は起きやすかった」と指摘した。 現場付近について、同連絡会の工藤雅和さん(43)は「ガイドもよく使うコース。午前中も滑っている人がいたと聞く」と話した。一方、救助に向かった際には「霧で視界が悪かった」と振り返った。 八甲田ロープウェー関係者によると、女性たちのグループは、ここ5、6年、毎年八甲田を訪れていた。ガイドらによると、女性は搬送時既に意識がなく、担架に乗せられて下山。女性と一緒にいた3人は「憔悴(しょうすい)しきった様子だった」という。 ガイドたちは、電波で居場所を知らせる「ビーコン」やスコップなど、雪崩に備える装備を整えて山に入るよう呼び掛ける。相馬会長は、スキーヤーやボーダーに向け、「一人一人が雪崩の知識を持つことは必須」と強調。青森市の山岳写真家一戸義孝さん(73)は「雪崩の距離が長くなればその分(人の)上に積もる雪の量が増え、身動きが取れなくなる。気温が高くなる日が増えれば、雪崩の危険性も増す。注意してほしい」と警鐘を鳴らした。