「CO2減らないならCO2除去技術を作ればいいじゃない」って、どうなの?
イーロン・マスク氏もお金出すって言ってるけど。 いま世界各国が、地球温暖化を食い止めるために二酸化炭素排出を減らそうとしています。でも他のいろんなことと同じように、人や企業の努力に頼るんじゃなくて、技術開発でざっくりどうにかできないのか?というアプローチもあります。とくに空気中の二酸化炭素を集めて取り除くCDR(Carbon Dioxide Removal)技術が注目されていて、イーロン・マスク氏やビル・ゲイツ氏も推してるんですが、それには賛否両論あるようで…米Gizmodoの兄弟サイト・EartherのBrian Kahn氏が、CDRの課題を提起しています。 今や世界一の富豪となったイーロン・マスク氏のツイートは、株式市場を動かしたり、ジョーク仮想通貨に資金を誘導したり、いろんなことをしでかしてます。なのでこの前1月、彼が「空気中の炭素をつかまえる技術への賞金として1億ドル(約105億円)寄付するよ」とツイートすると、案の定注目を集めました。 思わせぶりなツイートのあとには、1億ドルの寄付先がXPRIZEの4年がかりの炭素除去コンペであることが明かされました。XPRIZEは、Google創業者のラリー・ページ氏とか映画監督のジェームズ・キャメロン氏といったフューチャリストを理事とするプロジェクトで、今回の炭素除去技術への賞金構想は、ネオリベラルと技術楽観主義の合体による妄想の産物です。彼らは我々の壊れた政治システムが対応できない問題を、新技術の創造で解決しようとしているのです。 この賞金構想は、近頃ビリオネア階級たちが二酸化炭素除去技術(科学とか政治の世界ではCDRと呼んでます)を実現しようと動いている、そんなムーブメントの一環です。地球規模の問題を新技術で救う、そんなストーリーはSF映画みたいで快いんですが、そのぶん大事なことが見えにくくなってしまいます。大事なこととは、CDRにはリアルな課題があるという事実、そしていま、ひと握りのスーパーリッチな(ほぼ)男性や企業だけで、気候変動対策の視野を定めてしまおうとしていることです。マスク氏のツイートみたいなことで話題になればなるほど、我々の目の前にすでにある解決策を見過ごしてしまうリスクが大きくなり、ひいては次世代の人たちにムダな負担をかけてしまうのです。