世界を上回るペースでBoxが日本で受け入れられている理由 「Box AI」で加速する社内コンテンツの活用
非構造化データとAIは相性がいい Boxが踏み出す新たな道とは?
―― Boxでは自らの取り組みが、「第3章」に突入したと位置付けています。これまでの経緯を教えてください。 古市 Boxは2005年に創業し、2013年に日本法人を設立しました。創業から10年間の第1章は、「ファイルの同期と共有を行うサービスを提供する企業」という位置付けでした。2016年からの7年間は、第2章として「コンテンツの管理と安全管理」に力を注ぎ、それに合わせてプロダクトを拡張してきました。そして、2022年からは「インテリジェンスと自動化」に取り組んでおり、これを第3章と呼んでいます。 ここでは、インテリジェントコンテンツマネジメント(ICM)の方針を打ち出しAIを活用することで、これまでの「コンテンツクラウドマネジメント(CCM)」から、より一歩進んだサービスになったと位置付けています。 米国ではECM(エンタープライズコンテンツマネジメント)が注目を集めていますが、Boxが打ち出したICMは、それを進化したものであるという訴求も行っています。ただ、日本ではECMがあまり浸透していませんから、ECMをICMによって置き換えていくという提案は、なかなか理解されにくいので、異なるアプローチを取る必要があると考えています。 ―― Boxは、AIをどう捉えていますか。 古市 非構造化データとAIは、とても相性がいいと思っています。Boxによってコンテンツが一元管理されるようになると、AIを活用してコンテンツの検索や要約、生成が行いやすくなります。 これまでは、コンテンツを検索する場合には「そのファイルは、このときに使っていたはず」とか、「このあたりに格納してある」といったように、認知能力を元に検索をすることが多かったのですが、AIを活用することで、認知能力の制約がなくなり、全社で一元管理されたコンテンツの中から、目的にあったものを横断的に検索することができるようになります。Boxと生成AIを組み合わせることで、より効果的なコンテンツ活用が可能になるというわけです。 Boxは自らAIエンジンを開発しているわけではなく、世の中にある優れたAIを活用し、それぞれのAIの特性を生かした活用ができるようにしています。MicrosoftのAzure OpenAI Serviceや、Google CloudのGemini、AnthropicのClaude、AWSのAmazon Titan、IBMのwatsonxの他、お客さまの独自のAIも活用できるようにし、目的に応じてAIを選択できるようにしています。もちろん、日本のユーザーのためには、日本語に最適化したLLMの利用が求められていますから、そうした声にも対応できるように検討を進めているところです。 今は「この資料を要約して」といったように、単一ドキュメントに対して、AIで問いかけるといった用途が中心になっていますが、徐々に複数のドキュメントを元に、AIを活用することが増えているところです。 例えば「育児休暇中の給与はどうなるのか」といった問い合わせには、ポータルである「Box Hubs」に労務規定などの複数の情報を入れておき、それによって的確な回答を得ることができます。Box社内でも、Box Hubsの中にBoxの活用事例のデータを全て入れて「この業界の優れた活用事例を教えて」と言うだけで、代表的な事例が抽出できるといった使い方をしています。Box AIは、動画や静止画、図表にも利用できますから、ファッション業界など、画像を多用しているシーンでも活用が可能です。 将来的には、社内に蓄積した全てのデータを読み込ませて、「我が社が着手すべき新規事業は何か」といった質問をすれば、AIがそれを答えてくれるという世界が想定されますが、社内に蓄積されたコンテンツは全てが正しいわけではありませんし、ハルシネーションが起こる可能性がありますから、そこに到達するまでには、まだ時間がかかりますね。 一方、BoxではAIの活用によって、文書のライフサイクルマネジメントを自動化するといったことにも取り組んでいます。データ入力フォームビルダーである「Box Forms」でデータを取り込み、テンプレートとデータを活用しながら、Box Doc Genで文書を作成して保管。ワークフローである「Box Relay」によってレビューや承認を行い、Box Signで電子署名をし、「Box AI metadata extraction」により、AIを活用したメタデータの自動生成を行うことで、コンテンツの検索が可能になるといった活用ができます。さらに、ここにノーコード開発ツールである「Box Apps」(旧Crooze)を活用して、さらに自動化を推進することになります。 ―― Boxでは「Box AI元年」という言い方をしていますね。 古市 Boxは2024年をスタートに、インテリジェンスと自動化に向けた取り組みを加速することになり、Box AIに関するサービスや機能は今後も増えていきます。今お話した文書のライフサイクルマネジメントの自動化を構成するサービスの中にも、リリースはこれからというものが含まれています。 こういったインテリジェンスと自化の世界を、AIによって作り上げていくことを宣言し、それに向けたサービスを投入していくという点で、2024年を「Box AI元年」としています。それを裏づけるように、2024年11月に、米サンフランシスコで開催した「BoxWorks 2024」でも、インテリジェンスと自動化に関するサービスと機能を数多く発表しました。 ・インタビュー後編はこちら→「日本社会の幸福がなくてはBoxの幸福はない」 古市社長がこだわる組織作り
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