世界を上回るペースでBoxが日本で受け入れられている理由 「Box AI」で加速する社内コンテンツの活用
Boxが、「第3章」の幕開けを迎えている。 コンテンツの同期と共有からスタートしたBoxのサービスは、コロナ禍においてリモートワークが進展する中、セキュアなコンテンツ管理の仕組みとして高い評価を得て、日本でも利用が大きく拡大。さらに、昨今ではAIを活用したインテリジェントコンテンツマネジメント(ICM)のメッセージを打ち出し、セキュアなコラボレーションやコンテンツ管理、AIを活用したワークフローの実現を支援するサービスへと進化している。 【写真】あずきバーで有名な井村屋グループは、社内のデジタル化にBoxをフル活用している そして2024年11月に、米サンフランシスコで開催した同社年次カンファレンス「BoxWorks 2024」では、「Content+AI」をテーマに、ICMを次のステージへと引き上げた。 インタビュー前編では、Box Japanの古市克典社長に、これまでのBoxの経緯を振り返ってもらいつつ、“第3章”となるインテリジェントコンテンツマネジメントの取り組みについて聞いた。 ・インタビュー後編はこちら→「日本社会の幸福がなくてはBoxの幸福はない」 古市社長がこだわる組織作り
Boxが日本のユーザーに受け入れられている理由
―― 日本におけるBoxのユーザー数が、着実に増加しているようですね。 古市 Boxの国内ユーザー数は、2019年には4800社だったものが、2024年には1万8000社に達し、この5年間で3.5倍に増加しました。また、日経平均株価の日経225では、75%の企業がBoxを利用しています。コロナ禍をきっかけに、Boxを活用する日本のユーザーが急速に増えており、その背景には、Boxが掲げてきたコンテンツクラウドに対する評価が高まってきた点が挙げられます。 例えば、企業で日々利用している資料や契約書、営業コンテンツ、動画などの非構造化データは、社内データ全体の9割を占めるにも関わらず、その多くが個人活用だけで、全社活用ができていないという実態があります。 しかも、それらのデータを活用する環境が、コロナ前には出社を前提としたものになっており、ハイブリッドワークを始めとした新たな働き方において、さまざまな課題が生まれたことは、多くの人が経験したのではないでしょうか。 コロナ禍では、多くの企業がSaaSを導入し、リモートワークでもデータを活用できるようにしましたが、その結果、アプリケーションごとにファイルが保管され、クラウド上にデータが分散され、さらに、利用者がそれぞれにファイルを利用するため、最新版のファイルがどれか分からないといったように、「ファイルの迷子問題」があちこちで見られるようになりました。 これを解決したのがBoxです。それまでファイルの管理は、アプリケーションごとにMicrosoftやGoogleなどに任せていたわけですが、いろいろなSaaSが活用されるようになると、そのままでは生産性が低下してコストが増大し安全性が低下する状況に直面した企業が相次ぎました。その解決策が、アプリケーションとファイルを分離して管理できるBoxだったわけです。コロナ禍をきっかけに、多くの企業がクラウドを利用し始めた結果、そこで生まれる課題を解決するためにBoxの採用が進んだのです。 Boxであれば格納できるデータ容量は無制限ですし、ファイルを1カ所に置くことで「ファイルの迷子問題」も解決できます。また、現場ではアプリケーションごとに異なるセキュリティポリシーの設定に混乱しており、それが情報漏えいの温床になるケースもありましたが、Boxによって統一されたセキュリティポリシーの元で、最新のセキュリティ技術を活用しながら、ファイルの管理、運用ができる点も評価されています。 さらに、電子署名サービスの「Box Sign」も、高い評価を得ました。これは日本法人から本社に強く要望して追加した機能でもあるのですが、他社の電子署名サービスが容量課金であるのに対して、Box Signは無制限で利用できますし、経済産業省のグレーゾーン解消制度にも対応していますから、あらゆるところに電子署名を利用する環境を実現できます。 お客さまのニーズが拡大し、それに伴ってBoxがサービスを提供する範囲も拡大しています。しかし、2005年の創業時からの基本姿勢は、他社が持つ優れたサービスとつなぐことであり、その方針は変わりません。 ―― Boxが日本のユーザーに受け入れられている理由は何でしょうか。 古市 Boxは、「チームワーク促進ツール」といえる存在です。一般的に言われるのが、日本の企業は組織力が強いという点です。コラボレーションやチームワークを重視した日本企業の仕事の進め方にBoxがマッチしたといえます。 そして、もう1つの理由は、Boxの米本社が、日本のユーザーの声に敏感だということです。例を挙げると、最新のBox AIを開発する際にも日本からパイロットユーザーに参加してほしいという強い要望が本社からあり、日本から2社が参加して日本の声を製品化に反映しています。 実はBoxのグローバルの売上げのうち、約21%が日本法人となっています。外資系企業としては異例ともいえる高い水準です。しかも、円安の中での結果ですし、日本での受注高も増えていますから、この比率はまだ上昇することになります。 米本社も日本のお客さまを大事にしたいという気持ちが強く、日本市場にとっては、とてもいい循環が生まれています。他の外資系IT企業からBoxに入社した社員から驚かれるのは、「そこまで日本からの要望を伝えることができるんだ」という点なんですよ(笑)。 Boxの日本法人を立ち上げた際にはリソースが限られ、知名度も低く、Boxの良さがなかなか理解されませんでした。私は分析が好きなので業界や企業規模などに分類しながら分析をして、どこにBoxの市場性があるのかを考えたのですが、それがことごとくうまく行かない(笑)。行き詰まったときに、ふと思ったのが業界や規模は関係なく、イノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる人たちにアプローチするのがいいのではないかということでした。 実際、Boxの良さを最初に理解してくれたのは、新たなテクノロジーに敏感なITリーダーの人たちで、そこから社内に広がっていくという流れができ、その動きを見た他社の先進的ITリーダーたちが関心を寄せるという流れができました。 今はマジョリティー層にまで広がり、官公庁や金融など、もともとクラウドには保守的と言われた企業や組織にもBoxが導入されています。「Box Zones」で任意の地域内にコンテンツを保管できるようにしており、日本では、Google Cloud Platformの他、AWSおよびMicrosoft Azureの一部データセンターを活用して、PaaSの上でBoxを稼働させ、国内にコンテンツを保管し、処理できるようにしています。 私たちは年次イベントとして、「Box Works Tokyo」を毎年日本で開催していますが、参加者からは、「事例の発表が多いですね」と、よく言われます。このように、日本でも数多くの新たな事例が創出されているところです。