阪神・大山 甲子園に響く残留コール ファン感謝デーでFA宣言後“初登場”、大歓声に帽子を取って応える
阪神から国内フリーエージェント(FA)権を行使した大山悠輔内野手(29)が23日、甲子園球場で行われた「ファン感謝デー2024」に参加した。オープニングからフィナーレまで、姿を現すたびに3万8500人の虎党から“残留要請”とも言える大歓声を一身に受けた4番打者。今季、リーグ優勝を譲った宿敵・巨人からも大型契約が提示されており、移籍か残留か、決断の時が迫ってきた。 赤い生地に黒字で「大山悠輔」と記されたネームタオルが、スタンドのあちらこちらで揺れた。1年間、声をからした虎党へ謝意を示す「ファン感謝デー2024」。13日に国内FA権の行使を表明して以降、初めてファンの前に姿を現した大山は、四方八方から飛んでくる「ラブコール」に対し、素直に感謝の言葉を口にした。「(声援はありがたい?)はい、それはもちろんです」 正午、快晴の甲子園。オープニングで右翼側から木浪と入場する際に、最初のうねりが起きた。「おおやまー!」「来年も残ってくれー!」。祈りにも似た叫びが聖地にこだまする。その後もドッジボールや朝日放送の人気番組「相席食堂」内で結成された野球チームとのエキシビションマッチなど、出番が訪れるたびにスタンドは沸騰した。特に野球対決では慣れ親しんだ「4番・一塁」でフル出場。2打席無安打ながら、公式戦に勝るとも劣らない熱い歓声を全身に浴び、感謝の全力プレーで応えた。 そして、最高潮の盛り上がりを見せたのが、フィナーレの場内一周だった。外野フェンス沿いを歩く背番号3に対し「大山!大山!」の大合唱。残留を懇願する無数の声が飛び交った。阪神からは5年総額20億円規模、巨人から6年24億円超の大型契約を提示されるなど、野球人生の岐路に立つ大山のハートにも確かに響いたはずだ。 “有言実行”の一日でもあった。21日、タイガース杯ゴルフに参加した際「(ファン感謝デーで)1年間の感謝の気持ちを伝えたい」と吐露。「FA宣言している身ではあるが、そことは別のところでしっかりやりたい」という決意に偽りはなく、終始笑顔で交流を楽しんだ。「楽しかったです。良かったです」。言葉こそ少なくとも、その表情には充足感が漂っていた。 13日の宣言会見から11日が経過した。熟考の姿勢を貫く大山にも、刻一刻と決断の時は迫る。一つの区切りとも言える「感謝の11・23」は終幕。巨人への移籍か、阪神残留か、注目の瞬間はそう遠くない時期に訪れそうだ。(八木 勇磨) ≪ファン切実「阪神の象徴」≫ 来季もタテジマを着てほしい――。「大山コール」を聖地に響かせたファンの思いは一つだった。いずれも背番号3のユニホームを身にまとった4人組の虎党は「野球対決で打席に入る姿や、一塁の守備に就く姿を見たときに、来年いないのが想像できなかった。残ってほしい」と声をそろえた。東大阪市から来場した20代男性は「18年の最下位シーズンで頑張ってくれたことを覚えている。大山は阪神の象徴」と言い切った。切実な願いが届くと信じたい。一方で、大山の選択を“条件付き”で応援するというファンも。大阪市在住の60代男性は「残ってほしいのはやまやまだが、頑張ってつかみ取った権利。尊重したいと思う。ただ、東京のあの球団だけは…」と複雑な心境を吐露した。