「財布がない」姑が目の色変えて大騒ぎ…嫁が絶句した発見場所
入院中に大腿骨を骨折した姑。手術は成功した一方で、介護の負担が減ることはなかった。息子夫婦の協力によってつかの間の休息をとることができたものの、癇に障るお見舞いや姑の理解できない言動に今後への不安が募っていく。 ※幻冬舎ゴールドライフオンラインの人気エッセイ 『嫁姑奮戦記』 を連載でお届けします。
「財布がないねん、盗られたんやろか」
退院した当日、早速騒動が持ち上がった。帰宅したらすぐお金が欲しい、お金がないと寂しいわと言うので預かっていたお金を全て渡す。姑は若い時から八十前まで商売をしていたから、現金がないと寂しいらしい。 姑のクリーニングを取りに行って、帰って来て代金を請求すると、お金なんてあらへんでと言う。「行く前に渡したやないの」と言うと、そんなもん知らんと言うではないか。また例の癖でどこかに隠したのだろう。放っておくことにする。 しばらくして下の姑の部屋に行くと、畳に座り込んでタンスや押入れを引っかき回している。「そんな座り込んだら脚痛いでしょう。何しているの」と聞くと、「財布がないねん、盗られたんやろか」と言う。「鍵閉めて行ったのにそれはないわ。どこかにしまって忘れたんでしょう」と軽くあしらうが、本人は目の色変えて不自由な脚を引きずりながら捜している。手伝わないわけにはいかない。 布団の間、タンスの引き出しの下、服のポケットと、どこを探しても見つからない。「どうせ家の中、そのうち出てくるわ」と私は用事があるので切り上げるが、姑はなおも捜している。そのうち帰って来た夫や娘まで加わり大捜索となる。 夕飯もそっちのけだ。捜索は部屋を出て台所、トイレ、浴室、冷蔵庫、袋戸棚、食器棚、物入れと物が入りそうな所は徹底的に調べるがない。当夜は打ち切り、姑の記憶が戻るのを期待する。早々これかとうんざり。 財布をそのまま渡したことを後悔するが、あとのまつり。そういえば、入院早々隠した財布が十日ほどして部屋を替わった際、ややこしい所から出て来たと看護婦さんからお聞きした。