絶品イクラ、旬を迎えた紅ズワイガニ「角上魚類」年末商戦の舞台裏
11月。栁下さんの命を受け、「角上魚類」のバイヤーが北海道へ。商品調達本部 本部長のの有馬 徹さんは、品評会で評価が高かった水産物加工会社を訪ねた。筋子は道内で水揚げされたばかりの秋鮭のもので、質の良さが伺える。 「すごくいい卵。(サケが)川に戻ってくる時は、産卵する間近なので、卵がかみ切れないぐらい硬くなってしまうが、この時期にしては本当に柔らかい」(有馬さん)。 有馬さんは素材の良さに加え、水切りの時間やしょうゆだれの配合なども確認し、17トンもの量を買い付けた。早速価格の交渉に入るが、10円単位の探り合いが続いた末、値下げできたのは10円ほど。それでも、年末商戦にふさわしいイクラを仕入れることができた。
旬を迎えた“紅ズワイガニ”“能登の寒ブリ”を大量確保
「角上魚類」の本店は新潟・寺泊にあり、1974年、一軒の鮮魚店から始まった。今や従業員は1200人を超え、売上高426億円にまで成長。その原動力となった仕入れの拠点が、新潟市にある「地方卸売市場新潟市場」だ。
この日、有馬さんは冬の水揚げ状況を確かめにやって来たが、「今は魚が少ない」という。有馬さんは豊洲市場(東京・江東区)にいる鮮魚部 部長の呉井宏之さんに電話をかけ、新潟と豊洲、お互いの状況を確認しながらどんどん魚を買い付ける。 「角上魚類」が取扱う鮮魚は1カ月間で約700トン。しかし、近年の漁獲量の減少で、市場に魚が集まらない。有馬さんは 「(新潟と豊洲の)2カ所拠点でやるのはもう難しい。待っていても魚は来ない。こっちから動かいていかないと魚が集まらない」と話す。
有馬さんと呉井さんは、仕入れルートを開拓するため鳥取・境港市へ。ここで水揚げされていたのは旬を迎えた“紅ズワイガニ”で、山積みになったカニが700ケース、約20トンもある。だが、カニは鮮度が落ちやすく、これだけの量を生で売り切るのは大変なため、大半が地元の加工用に回り、安値で取引されてしまうそう。有馬さんは「うちだったら生出荷でOK」とアピールし、年末商戦に向けて大量に確保することができた。