Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

銀杏BOYZ初の配信ライヴにあった〈君と僕〉の世界。そして待望のニューアルバムの全容が判明!

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
音楽と人

8月12日に行なわれた、銀杏BOYZの無観客生配信ライヴ〈銀杏BOYZ スマホライブ2020〉。銀杏BOYZの音楽の根っこにあるものを感じ取ることができたこの日の様子をレポートする。

スマホの小さな画面は、自身を満たしてくれる世界へ連れて行ってくれる入り口

事前アナウンスにて、スマートフォンでの視聴が推奨されていた〈銀杏BOYZ スマホライブ2020〉。開演時間になり切り替わった配信画面は、縦長の画角、見覚えのある動画撮影時のアイコンが表示されており、公演タイトル通り、バンドにとって初となる無観客生配信ライヴは、スマホカメラでの撮影による配信となっていたのだった。

20時すぎ、画面に夜の街を歩くマスク姿の峯田が映し出される。どこかで見たことある路地だな、と思っているとほどなくして峯田が見上げた視線の先にあったのは渋谷ラママの看板。このハコが、この日の会場だ。受付で手指の消毒と検温を行い地下のホールへと向かう峯田を追うカメラは、階段を下りきった先にある入り口のドアを開けようとする手元を映し出す。ドアの向こうからは、バンドの音が漏れ聞こえてくる。〈ああ、初めてライヴハウスに行ってドアを開ける時なんかドキドキしたよな〉なんてことを思った瞬間から、スマホカメラの画面は、自分自身の視線と同化していったのだった。

ドアを開け、ドカドカうるさい爆音が鳴り響く薄暗いフロアを突き進み、マイクをとった峯田。「2020年8月12日、銀杏BOYZ、唄います!」と宣言し、〈いつの日にか僕らが心から笑えますように〉と唄われる「大人全滅」からライヴをスタートさせた。続く「NO FUTURE NO CRY」では、リッケンバッカーを抱え、白濁の液を口から垂らしながら唄い叫び、「エンジェルベイビー」では、カメラを指差して〈hello my friend そこにいるんだろ〉と画面の向こうに呼びかけるように唄いかける峯田。彼を囲むように陣取る、山本幹宗、藤原寛、岡山健二、加藤綾太という不動のサポートメンバーたちは、初っ端から全力で音をぶつけあっていく。その姿を映し出す複数台のスマートフォンカメラによる映像は、さながらマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのジャケットのようだ。 そしてみずからの両手を握り、高く掲げながら「YOU & I」へと突入。この曲のイントロが始まると、この日の峯田と同じように、フロアには多くの握りしめた両手が〈俺はここにいるぞ〉と言わんばかりに掲げられていた、かつての光景を思い浮かべる。隣にいるやつと肩を組んで輪になってはしゃぎ回るような安易な一体感や連帯感などのない、〈君と僕〉だけの世界。本来なら、このラママのフロアにも、そんな景色が広がっていたはずだ。しかし今は、そうやって互いの存在を直接確かめ合うことはできない。そんな現状に対する歯痒さもあってなのか、峯田は何度も額にマイクを打ちつけながら唄っていたのだった。 4曲を終え、「換気のため、一旦休憩します」と告げ、会場の外へ出る汗だくのメンバーたち。しばしのインターバルを置いて始まった後半は、まずニューアルバムがようやく完成したことの報告から始まり、「いつもは人がいる中で唄ってますけども、今日ライヴが始まってから今まで、誰もいないって感じでライヴやってないなと思ってて。〈やっぱりいるな〉、ここにいるなって思ってます」とこの日初めてのMCをする峯田。その言葉に続けて、プロレスラーの木村花や、最後にこの場所で対バンを果たしたオナニーマシーンのイノマー、峯田の出身地である山形に所縁あるミュージシャン遠藤ミチロウ、そして祖母や地元の友人の名を挙げ、「俺は今日、ここ渋谷ラママで唄ってます。みんなに届いてくれればいいな」と、アコギを抱え「夜王子と月の姫」のイントロを奏でる。もうここにはいない、大好きなあなたへの想いが優しいメロディとともに響くこの曲に続けて演奏されたのは、「光」。叫ぶように祈るように唄う峯田にグッと寄った画面はもはやピントもあってないけれど、それは今このライヴにグッと引き込まれている自分の気持ちを表しているかのようでもあり、降り注ぐフィードバックノイズに包まれながら感情がグッと高まっているのを感じたのだった。 「新曲やります」と、何度か弾き語りで演奏されていた「アーメン・ザーメン・メリーチェイン」をバンドアレンジで初披露。スイートでポップなメロディと、切なくもどこか温かみのあるサウンドを持ったこのミドルチューンから「BABY BABY」へと流れ込み、ライヴはクライマックスへと向かっていく。「いつか会えますように、という気持ちを込めて」という言葉とともに始まったラストナンバー「ぽあだむ」では、1台のカメラをロックオンし、何度も投げキッスをしたり、レンズを舐めたりと画面越しの濃厚接触を試みる峯田。そして「世界中のみなさま、銀杏BOYZでした。また会いましょう」と語り、画面のストップボタンを押すかのようにレンズを指で覆ってライヴを終了させたのだった。 解像度の低い、ノイジーな画像や音像は、ひと昔前の海賊版ビデオを観ているようなドキドキ感があったし、メンバーを至近距離で捉えたカットやめまぐるしく変わる映像による臨場感もあり、スマートフォンによる撮影だからこそ、ライヴハウスならではの高揚感をもたらしていた気がする。だがなによりスマホの小さな画面は、外界を遮断しひとりぼっちの世界にしてくれるのと同時に、自身を満たしてくれる世界へも連れて行ってくれる入り口であり、だからこそ、ひとりぼっちの部屋やヘッドフォンで聴いた音楽によって、何かと繋がれたような気持ちになった、あの感覚を思い起こさせた。ああ、これが銀杏BOYZなんだよな、と改めて実感できた、そんな配信ライヴとなったのだった。 後半のMCで報告されたように、銀杏BOYZの新作が、10月21日にリリースされる。この日のライヴのラスト、カメラに向かってとろけるような笑顔を見せた峯田の気持ちが、そのまま表れているかのような、『ねえみんな大好きだよ』というタイトルのこの作品は、実に約6年半ぶり、サポートメンバーを迎えた現在の体制では初となるアルバムだ。 配信ライヴでも披露した「大人全滅」「アーメン・ザーメン・メリーチェイン」をはじめ、劇場限定で発売された「いちごの唄」のアルバムミックスやこれまでリリースされたシングル4曲に、まっさらな新曲を加えた全11曲が収録される。また2005年発表のアルバム『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』収録の「駆け抜けて性春」以来、15年ぶりにYUKIが「恋は永遠 feat.YUKI」にゲストヴォーカルとして参加。また、銀杏BOYZの初期作から幾度となくレコーディングに参加してきた元BO GUMBOSのDr.kyOnが、「生きたい」でピアノを弾き、くるりやthe HIATUSの作品でも活躍するUCARY VALENTINEがプログラミングで4曲参加しているという。 コロナ禍の今、銀杏BOYZの新作は、一体どんなふうに響くのだろうか。今から楽しみでならない。

平林道子(音楽と人編集部)

【関連記事】