「プライドを捨てるのが大事」“広報兼選手”井林茉里奈が語る元アスリートの仕事論
引退から約1年半後、井林茉里奈(いばやしまりな)は異例の現役復帰を遂げた。元々トップおとめピンポンズ名古屋の広報として働いてたため、選手と広報を兼任するシーズンを送った。さらに2020年6月には結婚もして、家庭も持っている。 【写真】私服で試合中とは違った表情を見せる井林茉里奈 「選手100%、広報100%、家庭50%ぐらいでやってます(笑)」。 広報専任時代と比べると250%でフル稼働する井林に、兼任選手の働き方や広報としての心構えを尋ねた。
Tリーグチーム、広報の働き方
井林は、選手としてだけではなく、広報としてもトップ名古屋を支えている。今回の取材も“広報”井林宛にメールで依頼し実現したものだ。 「今のトップ名古屋の事務局の仕事は、チームのファンを増やすことだったり、試合を多くの方に見に来ていただくことがすごく大事。どうしたらチームが良くなるかを考えて、施策を打っています」。 地域と連携した施策やメディア対応、SNSでのキャンペーン企画など広報業務は多岐にわたる。地域のスポーツセンターでの講習会や近隣小中学校での卓球教室も、井林から名古屋市へ打診し実施にこぎつけた。他にも「一緒に愛知県を盛り上げたい」という気持ちから、Jリーグ・名古屋グランパスのガールズフェスタへ参加したこともある。
一番大事なことは「プライドを捨てる」
1人のアスリートであるとともに1人の社会人でもある井林を支えているのは、十六銀行で選手を引退してからの“半年間”だ。 実業団の十六銀行で選手を一度引退した井林は、2019年4月から10月の半年間、一般社員として銀行で勤務していた。井林が所属したのは、営業統括本部お客さまサービス。新入社員や中途社員へのマナー講師など、一般行員の見本とならなければいけない部署だ。 「他の行員の見本となる部署なので、上司も見習うところばかりで、こういう人間になりたいなと働きながら思いました。周りにも気を遣えたり、一つ一つの仕事が丁寧だったり。見本になる人がいっぱいいたので、ただただ緊張しました。食事の食べ方も、他の行員さんの見本になるようにしないといけないので、お昼ご飯の味は一切しなかったです(笑)」。 実業団の卓球選手から、他の行員の見本となる部署へ。初めて卓球界の外に出て味わったこの厳しい経験は、井林にとっては新鮮でもあった。 「本当にキツかった。でもそこで直面しました。卓球やってたと言っても、『何?卓球選手だったの?へーそうなんだ』みたいな。ショックでしたけどプライド捨てなきゃやっていけないなって」。 そして、これこそが井林自身の望んだ環境でもあった。