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誤差「300億年で1秒」の光格子時計、何がすごい? どこに使う?

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現代ビジネス

---------- 好評連載「現役東大生のサイエンス入門」、今回は驚くべきスケールの「時間」の話です。その舞台は東京スカイツリー? ---------- 【写真】『ブラタモリ』が僕らの「知的興奮」をくすぐる理由  暗いニュースが続くこのご時勢ですが、明るいニュースにも目を向けたいですよね。そこで今回は、今年の4月に発表された「光格子時計」のニュースを紹介したいと思います。  光格子時計は、日本の理化学研究所や東京大学の研究チームが開発を進めているものです。その名の通り時計なのですが、精度が非常に高く、誤差がおよそ300億年に1秒しかありません。宇宙が誕生したのが138億年前と言われていることを考えると、その凄さがわかるでしょう。  これは、現在の1秒の長さの国際標準である「セシウム原子時計」の約100倍の精度を持つと言われています。  私たちがふだん使うぶんには、これほど精度の高い時計は必要ないでしょう。実は、これほど高精度を目指す意義は「一般相対性理論」に関わっています。今回ニュースとなった実験を紹介しながら、それがどういうことなのか説明していきます。

スカイツリーの展望台では何秒違うか

 この時計は20年近く前から開発が進んでおり、今回の実験によりその性能が確認されました。ポイントは、この実験が東京スカイツリーの展望台で行われたということです。  一般相対性理論によると、強い重力のもとでは時間の進み方が遅くなります。時間の進み方が速い・遅いという考え方は馴染みがないかもしれませんが、ふだん私たちが変わらないと思っている1秒の長さは、実は場所によって違うのです。  たとえば、ブラックホールの中は重力が強すぎて、外から観測すると時間がほぼ止まったように見えてしまうと言われています。逆に、火星は地球よりも重力が少し弱いので、時間の進み方が少し速くなると言われています。  地球上では地面に近いほど重力が大きいので、地面から離れるほど、つまり高い場所に行くほど、実は時間の進み方が速くなっています。ですから、スカイツリーの展望台では地上よりもほんの少しだけ時間が速く進んでいるのです。  展望台と地上の間の時間の差は、到底私たちが実感できるほどではありませんが、光格子時計ならその小さな差が検出できます。  実際、地上とスカイツリーの展望台にそれぞれ光格子時計を置いて時間を測った結果、展望台では地上よりも1日あたり4.26ナノ秒だけ速く時間が進んでいることがわかりました。(4.26ナノ秒=0.00000000426秒です! )  この実験のすごいところは、本来は実験室のほぼ全体を占めるほどに大きかった光格子時計を大型の冷蔵庫ぐらいのサイズまで小さくし、展望台のような場所に「持ち運べる」くらいの大きさにすることができたことと、数百メートル程度の、「人間の生活スケール」の高低差での時間のズレを計測できたことにあります。  この実験が成功したことで、光格子時計の実用化への道がグッと縮まったと言えるでしょう。

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