「国内が暗いのは経済界や国民のせい」ショルツ首相のもとで没落の一途をたどる「ドイツの不幸」
退歩に退歩を重ねるドイツ
「進歩の連立政権」というアピールで、2021年12月に始まったドイツのショルツ政権(社民党、緑の党、自民党の3党連立政権)。以来、ほぼ3年間、ドイツは進歩どころか、退歩に退歩を重ね、国庫は空っぽで来年の予算も組めずに虫の息だ。 【画像】イギリスで日本の「カツカレー」が“国民食”になっている驚きの理由 その上、11月6日には自民党が離脱し、内閣は空中分解。しかし、ショルツ首相は、「状況は厳しいが、大騒ぎするには及ばない」という雰囲気を醸し出すのが自分の役目と信じているらしく、いまだに薄笑いを浮かべている。 ちなみにショルツ首相は、10年ほど前に起こったCum-Exと呼ばれるドイツ史上最大ともいえる税金の不正還付事件についての関与が強く疑われており、2021年以来、ハンブルク市議会の調査委員会で証言をするために召喚され、つい最近も3度目の召喚があったばかりだ。ショルツ氏は、2011年から18年までハンブルクの第1市長だった(ハンブルクは特別自治市なので、第1市長は州首相と同格)。 Cum-Ex事件とは、ハンブルクのヴァーブルク銀行が2007年以来、巧妙なトリックで納税証明を得て、支払っていない巨額の税金を還付させていた事件で、国庫に与えた被害総額が数十億ユーロという巨大な犯罪だった。11年以来、税務署の捜査対象で、14年には『シュピーゲル』が報じ、広く国民の知るところとなった。 その後、ドイツやスイスでは関係者が逮捕され、有罪判決が出ている。ドイツの議会で正式に調査が始まったのは16年で、21年には連邦司法裁判所がヴァーブルク銀行に対し、1億7600万ユーロを国に返済せよという判決を出した。 ショルツ首相がこの事件とどんな関係があるかというと、16年、ハンブルク税務署が同銀行に4700万ユーロの返済を請求した際、当時、ハンブルクの市長であったショルツ氏が、銀行の代表と市庁舎で2度会見していたことだ。
「物忘れのオラフ」と呼ばれて
その後、税務署は突然、態度を翻し、銀行は返済する必要がないとした。ただ、すでに当時、銀行の内部に、このままでは後で大変なことになると警告した人たちがおり、税務署宛の文書が作成された。 それを知ったショルツ氏は、この文書を税務署ではなく、ハンブルクの財務議員(州の財務大臣と同格)であったチェンチャー氏に送るように電話でアドバイスしたという。チェンチャー氏はその後、18年、ショルツ氏の後任となり、現在もハンブルク市長だ。 さて、証言台に立ったショルツ氏は、当初、ヴァーブルクの頭取らと市役所で会ったことも否定していたが、証拠が出てきたためにそれは認めた。しかし、そこで何が話し合われたかということは、全て「思い出せない」の一点張り。そのため、氏が当時、チェンチャー氏に何を指示したか、あるいは、それが税務署の税務処理にどんな影響を与えたかといったことは、今も解明されないままだ。 ショルツ氏を指して、時々、「物忘れのオラフ」という言い方が使われるが、これは、この事件での証言を皮肉ったものだ(オラフは彼の名前)。 ここで何か不都合なことが証明されれば、刑事責任を問われるはずのショルツ氏だが、未だに何も思い出せない。それどころか、自分の無実は「今後も変わらないと確信している」そうだ。