シリア各地で見つかる「集団墓地」 処刑者を秘密裏に埋葬か
アサド政権が崩壊したシリアで、刑務所で処刑された人たちを埋葬したとみられる「集団墓地」が相次いで見つかっている。ダマスカス南部の国際空港近くで見つかった現場を15日に訪ねると、遺体を掘り返した穴のそばに、人骨を持った男性が立っていた。 【写真まとめ】行方不明の家族どこに 見つかった「集団墓地」 この男性はサッダームさん(30)。手に持っていた骨は、この空き地に埋まっていたのだという。「ここにはほかにもたくさん遺体があるはずだ」。指さす先には、乾いた土が広がっていた。 サッダームさんは姉ティサールさん(46)とともに、当局に拘束された双子の兄を捜索している。反体制派が解放した各地の刑務所を訪ね歩いたが手がかりはなく、この集団墓地に来たという。ティサールさんは「兄たちが生きている望みは持てない。きっとここに埋まっているはずだ」と涙を流した。 この空き地は約150メートル四方で、向かいには一般の墓地が広がっている。だが、空き地には墓地を示す印は何もない。14日に反体制派の関係者とみられる人たちが一部を掘り返して複数の遺体を見つけたというが、埋葬されている全体の人数も不明だ。 5年前から近くの墓地で墓掘り人として働いているアブ・アリさん(43)によると、アサド政権時代は夜間にたびたび軍の車両が来て、周囲を封鎖していた。近づくと拘束される恐れがあるため、アリさんは何をしているのか分からなかったが、「遺体を埋めているのを見た」と聞いたことがあるという。「アサド政権にはすべての国民が苦しめられた。怒りがこみあげてくる」 集団墓地はシリア中部でも見つかったと報じられている。 独裁体制を敷いたアサド政権下では、10万人以上が行方不明になっているとされ、拷問の末に処刑された人は6万人以上に上るとみられている。当局は殺害した収容者の遺体をまとめて運び、秘密裏にこうした集団墓地に埋めていた模様だ。 反体制派は8日にアサド政権を打倒した後、各地の刑務所から収容者を解放したが、消息が分からない人も少なくない。国家ぐるみの「処刑」の全容が判明するには時間がかかりそうだ。【ダマスカス金子淳】