【絶望から希望へ:神戸刑務所編】高齢化する懲役の悲哀――ウンコ置き去り事件《さかはらじん懲役合計21年2カ月》
人は絶望からどう立ち直ることができるのか。 人は悪の道からどのように社会と折り合いをつけることができるのか。 元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で回心した思いを最新刊著作『塀の中はワンダーランド』で著しました。実刑2年2カ月! じんさん、今度は神戸刑務所に3年間お世話になります。西の塀の中はお笑い劇場なみの面白さ。どん底でもどこか明るいそんな生活に気持ちが明るくなってきました。希望は、そんな「小さな面白さ」から育っていくような感じかもしれません。 この記事の写真はこちら ■甘納豆事件 懲役たちが自由にコミュニケートできるのは、どこの刑務所でも、グラウンドか講堂で行われるわずかな運動時間帯だけである。 ここは、凝縮した人生を生きてきている懲役たちの、様々な人間ドラマが語られ、時には突如として、過激なドラマが上演されたりする舞台でもあった。 講堂で運動していたあるとき、以前、ボクたちの部屋にいたことのある老人が、備えつけの自転車マシーンに乗って、ゆっくり漕いでいた。その傍で運動をしていたボクは、その老人の足元に丸くて黒い、甘納豆のような物が落ちていることに気づいた。こんなところに甘納豆が転がっているはずがない。 いったい何だろうと思って見ていると、自転車を漕ぐ老人のズボンの裾から、何かがコロコロと床に転げ落ちてきた。ボクは後ろから、自転車マシーンを漕ぐ老人の足元に顔を近づけて覗いて見た。すると、また老人のズボンの裾から丸い物が転がって床に落ちてきたのだ。 それはどうも締まりのなくなった老人のお尻の穴からこぼれ出てきた、正真正銘のウンコのようであった。ボクはある事情を知っていたので、皆の前でその老人に言うわけにも行かず、黙っていた。 このとき、7年半の刑期で務めている姫路の木原という〝突破者(向こう気の強いヤツ)〟と目が合った。老人への労わりの気持ちからなのか、それとも指摘して恨まれることを避けたのかはわからないが、その〝突破者〟も、わかってはいたが黙っていたのだ。 結局、そのウンコは、運動時間の終了とともに、講堂の床の上に置き去りにされてしまった。実は、その老人、前にボクたちの雑居部屋にいたことがあり、そのときに「ウンコ事件」を引き起こした張本人だったのだ。
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