急逝した夫が残した歯科医院「廃墟にしたくない」 跡地に菓子店オープン 患者ら訪問、売り切れも 銚子
銚子市唐子町の歯科クリニック跡地に、手作り菓子の小さな店「ホームメイドスイーツ アポロ」がオープンした。急逝した院長の妻、関佳代子さん(59)が菓子作りの腕を生かして4月に店を開き、家族のためにと振る舞ってきたシフォンケーキやスコーンなどを販売している。 関さんの夫、睦弘さんは約20年前に「アポロ歯科クリニック」を開業。しかし、昨年3月に59歳で亡くなった。突然の別れの後、がらんとした院内の光景に「心も空虚になった」と関さん。それでも、元気に夫が働き、患者らを迎えた場所を廃墟にしたくないと思いを強め「第2のアポロをやろう」と決意し、店名も「アポロ」を引き継いだ。開店に先立ち、同じ建物内に長男の個人指導の学習塾も開設した。
クリニックを改装して売り場や厨房(ちゅうぼう)などを整備。カウンターやケースに並ぶ菓子は、栄養士の資格を持つ関さんが素材にこだわり作り上げる。菓子のメニューは20種ほど。国内産小麦粉や発酵バターを使い、卵は特有の臭みを苦手とする関さんが見つけた品を取り寄せている。アポロの菓子に合うよう市内の店が用意するコーヒーも提供している。 関さん夫婦はともに市内出身で、3人の子どもを育てた。睦弘さんは生前、関さんの菓子作りを応援してくれていたといい、愛情を込めた菓子は家族の日常の場面や誕生日やクリスマスといったイベントを彩ってきた。関さんは「食べてほっとするものを提供したい」と話す。 4月21日のオープン後はクリニックに通っていた人らも訪れてくれた。閉店時間を待たず売り切れる日もあり「還暦の挑戦です」と笑う関さんは、家族の協力も受けながら、忙しい毎日を送っている。 アポロは銚子市唐子町34の11。木-土曜日の週3日営業。持ち帰りのみ。インスタグラムで店の情報を発信している。