復権のV5・石川佳純が“限界説”を跳ね返した決め手、「ループドライブ」の効能とは
無観客で行われた、2021年の卓球、全日本卓球選手権大会。女子シングルス決勝戦では、優勝の最有力候補である伊藤美誠を相手に、随所で圧倒的な勝負強さを発揮した石川佳純が、「復権」と言える5年ぶり5度目の優勝を飾った。試合前には伊藤が有利という声が多く聞かれたこの一戦を、逆転勝ちで制することになったカギは、バックハンドからのループドライブなど、強弱と緩急を使った卓球だった。 (文=本島修司、写真=KyodoNews)
復権のV5・石川佳純が“限界説”を跳ね返した決め手、「ループドライブ」の効能とは
無観客で行われた、2021年の卓球、全日本卓球選手権大会。女子シングルス決勝戦では、優勝の最有力候補である伊藤美誠を相手に、随所で圧倒的な勝負強さを発揮した石川佳純が、「復権」と言える5年ぶり5度目の優勝を飾った。試合前には伊藤が有利という声が多く聞かれたこの一戦を、逆転勝ちで制することになったカギは、バックハンドからのループドライブなど、強弱と緩急を使った卓球だった。 (文=本島修司、写真=KyodoNews)
強弱と緩急をつけた、スピードだけではないスタイル
この決勝戦。序盤は伊藤美誠選手が有利に試合を進めた。石川佳純選手から見ると年下の伊藤選手は、世界ランキングでは上位。格上の選手だ。特に、レシーブからバック面に貼った表ラバーでのチキータなどで攻撃を仕掛けて、回り込んでフォアハンドで決める姿は圧巻。3-1とリードした時点では、多くの人が伊藤選手の勝利だと感じた。 ところが第5ゲーム目から、少しずつ流れに変化が起きた。石川選手が、中陣あたりの得意なポジションで粘りを増すと、伊藤選手にもミスが出始める。さらに石川選手は、バックハンドから、回転量が多く、滞空時間の長いループドライブを挟む展開を披露。このバックハンドループドライブを、伊藤選手のミドルに落としていく。伊藤選手が、オーバーミスをしてしまう際に、予想以上に回転量が多かったのか、首をひねるような場面も見られ始めた。 第5ゲームをものにし、勢いに乗った第6ゲーム。ここでも6-4というリードを広げたい大事なポイントとなった一本で、バックハンドのループドライブ。それも、やや高さのある“大きめな弧を描く”ループドライブだ。これを伊藤選手がたたきにいき、オーバーミス。この光景は強く印象に残った。 試合は最終ゲームへ。9-9までもつれこんだ激しい攻防となったが、最後は、絶対に攻め抜くというような気迫を感じる速いドライブをストレートに打ち込んだ石川選手が勝利した。最後の一本は、この試合の一連の流れの中で、「スピードは遅いが、回転が強くて取りにくい」ループドライブを、有効な得点源として使い、かつ、見せ球としても印象付けていたからこそ効いた、戦術とコース取りだったといえるかもしれない。