研究者もびっくり イルカは「尿の味」で仲間を判別している
当てずっぽうの実験がイルカの知覚研究の新たな扉を開く
私たち人間は笑顔、声、歩き方など、さまざまな手掛かりを頼りに友達を認識している。生物学者の間では、数十年前から、イルカも親密な友情を育み、固有のホイッスル音(鳴き声)で友達を認識することが知られている。 ギャラリー:優雅で楽しげなイルカの写真 10点 そして最近、ハンドウイルカ(Tursiops truncatus)が味覚を使い、仲間の尿と無関係なイルカの尿を判別していると示唆する驚くべき研究結果が2022年5月18日付で学術誌「Science Advances」に発表された。 この研究を率いた米テキサス州スティーブン・F・オースティン州立大学の海洋生物学者ジェイソン・ブラック氏だが、実は当初から、ハンドウイルカが尿で互いを判別できるかどうかを調べようとしていたわけではない。本来の目的は、人が名前を頼りにするのと同じように、イルカも「シグネイチャーホイッスル」という個体に固有の音を駆使できるのかどうかを検証することだった。しかし、そのためには、イルカが互いを判別する方法がもう1つ必要だった。 イルカがホイッスル音を特定のイルカの「ラベル」として概念的に使えるのかどうかを調べるため、ブラック氏は意外な物質に注目した。尿だ。以前、野生のイルカがわざわざ尿の中を泳ぐ姿が観察されているため、イルカたちは尿から情報を収集しているのではないかと考えたのだ。 「当てずっぽうでした」とブラック氏は明かす。「正直なところ、うまくいくとは思っていませんでした」 ブラック氏のチームは飼育下のイルカを使った実験で、イルカたちは仲間の尿とホイッスル音の組み合わせにより注意を払うことを発見した。ブラック氏によれば、これはイルカたちがその個体をわかっていることを示唆しているという。 今回の発見は、動物が味覚のみで同種の個体を判別していることを示す初めての確かな証拠だ。また、イルカは少なくとも2つの手掛かりを頼りに個体を認識しており、人間と同様、家族や友達を複雑に理解していることも示された。 「驚きでした。とにかく驚きました」とブラック氏は振り返る。「予想以上にうまくいって、私は思わず笑みがこぼれました」