JAL、飛行機の揺れ防ぐ仕組み共同構築 乗客やCAのけが防止
日本航空(JAL/JL、9201)とウェザーニューズ(4825)は12月22日、航空機の揺れによる乗客や客室乗務員への影響を未然に防ぐ仕組みを共同で構築したと発表した。揺れの原因となる気流の乱れを示す指標を航空機内で自動計算できるようにし、地上に報告された情報を運航中の便に自動通知する仕組みを共同開発した。2021年1月から運用を本格化させる見通し。早期に揺れを回避することで、突然の揺れによる乗客や客室乗務員のけがを防いだり、乗り心地を良くする。 ◆ベルトサイン点灯や機内サービス早期判断 現在は乱気流に遭遇した場合、パイロットは揺れが収まった後に手動でデータを地上の運航管理者へ送ったり、無線を使って報告している。このため、乱気流に遭遇してから地上に報告が上がるまでに時間差があった。 また、地上に報告された揺れの情報が後続便に伝わるまでにも時間がかかり、情報が提供されるころには揺れるエリアに近づいてしまう事例も見られた。 後続便のパイロットが揺れの情報を早期に得られると、従来より早くシートベルトの着用サインを点灯させたり、客室乗務員が機内食や飲み物を提供するタイミングを早めに変更でき、飛行高度も揺れを避けた高度を選べるようになる。 ◆EDRを自動計算 JALは、世界各国で飛行中の揺れを把握する新たな基準として導入が検討されている「EDR(Eddy Dissipation Rate:渦消散率)」と呼ばれる指標を自動計算する仕組み「EDR計算アルゴリズム」を、日本の航空会社では初めて機内のコンピューターに搭載。JALでは、パイロットの体感を基に揺れを判定しているが、このアルゴリズムには計算結果のEDRを、この体感情報に換算する仕組みも備えているという。 地上に報告されたEDRによる揺れの情報は、パイロットが出発準備の際に使うウェザーニューズの運航管理支援システム「FOSTER-NEXTGEN」へリアルタイムに反映され、従来の揺れ情報に加えてEDRによる観測データも、飛行ルートや高度の選定などの判断に利用できるようになる。 ◆運航便に自動通知 また、揺れ情報をパイロットが地上の運航管理者に報告後、後続便には運航管理者が通知していた時間差については、自動通知するシステムを新たに開発して改善。パイロットから一定以上の揺れが報告された場合、自動的に後続便へ通知するシステムの運用を12月から開始した。 このシステムは、パイロットが航空機用のデータ通信システムにより、テキスト形式で手動報告した揺れ情報をAIエンジン(機械学習技術)で自動解読し、FOSTER-NEXTGEN上に表示。一定以上の揺れが報告された場合は、報告した航空機の位置と観測時間情報を基に、一定範囲内を通過中または今後通過する可能性のある航空機のパイロットに対して、自動で揺れ情報を通知するようにし、リアルタイムに把握できるようにした。 ◆揺れで骨折 けが人が発生する「航空事故」は、日本の航空会社では2019年度に3件起きており、いずれも機体の揺れが原因だった(関連記事)。3件のうち2件は全日本空輸(ANA/NH)、1件はJALグループの日本エアコミューター(JAC/JC)が運航する便で発生し、乗客や客室乗務員が骨折したり、軽傷を負っている。
Tadayuki YOSHIKAWA