「鳩の糞」かと思ったら、まさかの「ノーベル賞」ゲット…「偶然」見つけた大発見、今も届く「生まれたての宇宙の声」
当時、宇宙の温度は異常なほど均一だった
現在では、宇宙背景放射は地上からおよび人工衛星による観測によって詳細に調べられており、私たちに初期の宇宙の貴重な情報をもたらしてくれています。 それによると、この放射のスペクトルは光を全く反射しない仮想的な物体(黒体という)が絶対温度2・73Kのときに発する放射に精密に一致しています。 この放射はどの方向からもほぼ一様にきており、その温度も10万分の1程度の揺らぎがある他は完全に一様です。このことは、38万歳の時点での宇宙の原子核(主に水素の原子核である陽子)、電子、光の密度、温度が10万分の1の精度で一様であったことを意味します。 これは驚くべきことです。たとえばポタージュスープをイメージしてみましょう。いくらかきまぜてもその密度を10万分の1の精度で一様にすることなどできないでしょう。同じように、風呂の水や部屋の空気でさえも、その上部と下部での温度差は10万分の1どころではないでしょう。宇宙はそれほど完全に一様だったのです! これは現在の宇宙の姿とは全く異なります。現在の宇宙には銀河団、銀河、惑星系などの構造があり、物質の密度は一様とはほど遠いものです。たとえば銀河内部の平均密度は銀河外より何桁も高く、また恒星内部の物質の密度はほぼからっぽの空間である星間の物質密度よりはるかに大きいです。つまり、これらの構造は宇宙がほぼ完全に一様であった38万歳の頃から現在までの間に、何らかのメカニズムで形成されたと考えざるを得ません。では、何がどのようにして現在の宇宙の構造を作ったのでしょうか? また、それを調べることにより宇宙について何かわかることはあるのでしょうか? 次節で迫っていきたいと思います。 * * * さらに続きとなる記事<「驚愕の精度で一致」する…「無限の宇宙」の正体を暴くのはなんと「ミクロの学問」素粒子物理学!>では、宇宙の研究方法について詳しく解説しています。
野村 泰紀(バークレー理論物理学センター長・カリフォルニア大学バークレー校教授)