「鳩の糞」かと思ったら、まさかの「ノーベル賞」ゲット…「偶然」見つけた大発見、今も届く「生まれたての宇宙の声」
初期宇宙からの電波~宇宙背景放射
ここまで見てきた宇宙の歴史、つまり初期の宇宙は高温高密のビッグバン状態にあり、それが膨張によって冷やされて現在の姿になった、という描像は、どの程度観測的に確かめられているのでしょうか? 現在では様々な実験、観測により、少なくとも宇宙誕生後約0・1秒後以降はこの描像で(細部が見直される可能性はあるものの)基本的に正しいことがわかっています。これらの実験、観測は非常に多岐にわたりますが、ここでは年齢がまだ約38万歳、温度が3000度程度だった頃の初期の宇宙は「直接見えている」ということを説明したいと思います。 ちなみに現在の宇宙の年齢は約138億歳、温度は絶対温度にして2・7度、摂氏マイナス270度程度です。絶対温度とは、全ての分子や原子の運動が停止する摂氏マイナス273・15度をゼロ度とし、そこから摂氏と同じ目盛りを用いて測る温度で、単位はK(ケルビン)を使います。つまり摂氏との換算は、xK=(x–273.15)℃ の式で与えられます。
暗い夜空は実は輝いている
初期の宇宙が直接見えていることを理解する上で重要になるのは、光の速さが秒速約30万kmと有限であるという事実です。例として、1000光年の彼方にある星Aを考えてみましょう。前述のように光が1年かかって進む距離が1光年です。1000光年とは約1京=10¹⁶kmのことであり、これは私たちにとってはとてつもない距離ですが、広大な宇宙のなかでは大したことはありません。たとえば、私たちの銀河系内にあるオリオン座の星ベテルギウスまでの距離は約650光年です。 いずれにしても、今私たちがこの星Aを見たとすると、その光はこの星を1000年前に出発したということになります。すなわち、私たちはその星Aの1000年前の姿を見ているのです。もしさらに遠くの天体、たとえば1億光年の彼方にある銀河を観測すれば、それは私たちが宇宙の1億年前の姿を見ていることになるのです。 さらにより遠くを見ていったとすれば、何が見えてくると思いますか? ビッグバンの描像によれば、初期の宇宙は高温高密で光り輝く世界であったわけですから、星々や銀河よりさらに遠くの背景はピカピカに光り輝いているはずです。ところが、夜空は暗く、輝いてはいません。それはなぜなのでしょう。 実は暗くて輝いていない夜空は、本当は輝いているのです! なぜ輝きが見えないのでしょうか。それは宇宙が膨張しているからです。宇宙が膨張しているために、私たちに届く光はドップラー効果によりその波長が間延びして、可視光の範囲を外れてしまっているのです。