北山宏光出演「卒業タイ厶リミット」小説ならではの仕掛けを見事に映像化 原作・ドラマどちらからでも!
■小説でしかできないトラップを見事にアレンジ
辻堂ゆめの原作はとてもサスペンスフルな青春ミステリなのだけれど、実は、あるトラップが仕掛けられている。このトラップ、小説だからできる仕掛けなのだ。これをドラマで? どうやって? そしてそのトラップにつながる場面が放送されたとき、「あー、そう来ますか!」と、思わず身を乗り出してしまった。はっはあ! 原作を読んだ人にはわかってもらえるよね? 「あの人」の「あの場面」だけ見せ方を変えているじゃないか! (←ぎりぎりの表現) 小説でしか成立しないトラップを映像でどう処理するのか、原作は読んだがまだドラマを見てない人という人はぜひ確認してほしい。 逆にドラマだけ見て原作は未読という人は、すでにネタはわかっている状態で原作を読むと、初手から著者が仕掛けてきているのがわかってニヤニヤしちゃうよ。しかもメインの真相以外はドラマと原作で違いが多いので、そのトラップがわかっていても原作は新鮮に楽しめるはずだ。原作にはコメディ要素はなく、真正面から青春の葛藤に向き合えるぞ。 本書と同じように小説ならではの仕掛けがあるため映像化不可能と言われた小説を、チャレンジングな方法で映画やドラマに仕立てているケースは他にもある。ジャニーズ出演作なら、佐藤正午原作・風間俊介出演の「鳩の撃退法」(2021年、松竹)や、東野圭吾原作・玉森裕太主演「パラレルワールド・ラブストーリー」(2019年、松竹)がそうだ。そうそう、貴志祐介原作・大野智主演「鍵のかかった部屋」(2012年、フジテレビ)や麻耶雄嵩原作・相葉雅紀主演「貴族探偵」(2017年、フジテレビ)にも、それに該当する回があった。 映像化が難しいならそこだけカットしてもいいものを、「ではその部分を、映像でしかできない仕掛けでご覧にいれましょう」という作り手の工夫が見られるのは実に刺戟的。こういった作品は、ぜひ映像と原作を比べてみてほしい。そうそう、ジャニーズといえば、映像化はされていないが加藤シゲアキ『閃光スクランブル』(角川文庫)にも似た趣向があるよね。え? と思って最初から読み返すと、実に細やかに伏線が張られていたことがわかる。これを映像化するならどうなるかな? と思いながら再読するのも一興だ。