「それが気持ちのいい商売や」 わずか月額3万3000円でフランチャイズ展開する「やきとり大吉」。本部、店主、顧客の三方よしを実現した“人情派”な儲け方とは?
もちろん、ほかにも安い飲食店はたくさんあるが、大吉ほど味とクオリティを維持しながら値段が安い店はなかなかない。近藤社長は、「新鮮な鶏を自店で仕込んできちんと焼いたら、おいしいに決まってます。冷凍や海外から輸入した鶏とは比較になりません」とにやり。 ここまで、店主の裁量が大きい大吉のビジネスモデルを紹介してきた。けれど、わずか2つだけ、本部から指定している事柄がある。 1つ目は、取引酒販店だ。どうしてか。メディアでもしばしば取り上げられているが、大吉は、取引酒販店にスーパーバイザーの役割を依頼しているのだ。
なぜなら、大吉の社員は1000軒を運営しているときから10人のまま。全国にある店舗管理や運営の把握までは、とても手が回らないのだ。 酒販店は、毎日配送に行く際に、「禁止している生ものや魚を提供していないか」など、依頼項目をチェックして月に1回ダイキチシステムに提出する。「間違った方向にいかないように、親目線で子供を見守ってほしい」とお願いしているそうで、この考えを分かってくれる酒販店に取引先を限定しているのだ。酒販店にチェック費用の支払いは発生しないが、その地域の大吉の酒の仕入れはすべて任せる形で、お互いにウィンウィンな関係を保っている。
もう1つ指定しているのは、アルコール銘柄だ。清酒は全国に13カ所ある酒造のいずれかの銘柄を、それ以外の酒はサントリー製品に限っている。 サントリーホールディングスはエターナルホスピタリティグループに買収される前は大吉の親会社であり、酒販店同様、店舗訪問をしてくれていた間柄だった。売却後はいち取引先となったが、現在も協力体制は続き、何らかの気づきがあれば報告してくれるそうだ。 「経営とはなんぞや」を教えてくれる感のある、やきとり大吉の儲けの仕組み。自分の店を持ちたい人を、持続可能な形で応援する“人情派”な経営スタイルは、独特にして多くの学びを与えてくれる。
■ところで、買収の実態は…? それにしても、20年傘下に入っていたサントリーホールディングスからエターナルホスピタリティグループへの売却は、なぜ、どのように行われたのだろうか。 後編ー最盛期から半減「やきとり大吉」“反転攻勢”の秘策 課題は店主の高齢化、「白い大吉」で若返りを図るーではその経緯と、売却後の変化について解説する。
笹間 聖子 :フリーライター・編集者