「それが気持ちのいい商売や」 わずか月額3万3000円でフランチャイズ展開する「やきとり大吉」。本部、店主、顧客の三方よしを実現した“人情派”な儲け方とは?
現在、9割のオーナーがすでにオーナー方式に移行しており、リース方式の店は50店舗程度だという。 ■ロイヤリティで儲けず「夢を叶えるサポート」を 通常FCチェーンビジネスはロイヤリティで儲ける。立地戦略や看板で人を集め、店の売り上げが上がるほどに、ロイヤリティも上げるのが一般的だ。 ところが前述した大吉のロイヤリティは3万3000円。店舗の売上高のボリュームゾーンが月々150万~180万円であることを考えると、破格の安さだ。筆者が飲食チェーンを取材して聞く平均的なロイヤリティは、売り上げの3~10%の間である。
ちょっと安いのでは……と尋ねたところ、創業当初はもっと安い2万円だったそうだ。そこからすぐ3万円に上げ、今はそこに消費税10%の3000円が付いてはいるが、40年間ずっと値上げしていないというから驚く。 この金額であり続けているのは儲けよりも、「夢を持った人、若者を成功させたい」という創業理念を追求するスキームだから。単純計算して、毎月本部に入るのはロイヤリティ3万3000円✕約500軒で1650万円。その収入で、わずか10人の社員で身の丈にあった運営をしているのだ。
とはいえ経営者の立場から見ると、もっと儲けがほしいと思って当たり前。近藤社長は以前、創業者の辻氏にロイヤリティの歩合化について質問したことがあるそうだ。 「ロイヤリティを売り上げに対してパーセンテージにしていくと、本部が全店舗の売り上げを管理せんとあかん。それはものすごく大変やろ」 「売り上げをごまかすような人も出てきて、本部と店舗の信頼関係もなくなる」 「それぐらいやったら、なんぼでも売ってくれて儲けてくれたらいい。その代わりに本部に一定の金額を入れてもらう。それが気持ちのいい商売や」
答えは予想外のものだった。ロイヤリティを一定額にすることは、管理の手間削減や、店主との信頼関係の継続にもつながっていたのだ。 ■「売り上げを管理しない」というコスト削減 この考えに賛同した近藤社長は、今新しいチャレンジをしている一部の店舗をのぞき、売り上げを一切管理していない。店舗と本部はオンラインでもつながっていないそうだ。各店の経営はあくまで、店主の自主性に任されている。 加盟店にPOSシステムを置き、売り上げを管理しようと思えばできるだろう。そのほうが当然、売り上げを上げる施策も打てるに違いない。だが、あえてやらない。「仕組みを知れば知るほど、知り合いや一般の方から『変な会社やね』と言われます。けど、最初からそういう会社なので仕方ありません」と近藤社長は楽しげに話す。