「それが気持ちのいい商売や」 わずか月額3万3000円でフランチャイズ展開する「やきとり大吉」。本部、店主、顧客の三方よしを実現した“人情派”な儲け方とは?
■飲食店を始めたい人とオーナー志望者をマッチング 大吉が生業主義を取り入れた時期は、1977年の創業時に遡る。当時、ダイキチシステムは「飲食界情報管理センター」という名前だったそうだ。 創業者でカリスマ経営者であった辻成晃氏が、「お金はないけれど情熱を持って飲食店をやりたい人」と「飲食店のオーナーになって、毎月一定額を受け取りたい人」をマッチングする、「店舗銀行システム」(店舗を介して資本を貸借するシステム)としてスタートした組織だったのだ。その根本には、「夢を持った人、若者を成功させたい」という理念があった。
このため、法人からのFC加盟の申し出はすべて断ってきた。店舗が100店を超えて注目される時期になると、「1億円出すから10店舗作ってくれ」という声もあったそうだが、例外なく断ったという。 しかも驚くことに、飲食店チェーンとして法人登録をしたのは平成に入ってからだそうだ。それまでは、情報産業系の企業として登録されていたのだとか。一般的な飲食店経営企業とは、一線を画すスタンスだということがよく分かる。
そんな大吉には、確固たる店舗フォーマットがある。まず、店舗は10坪程度にとどめること。10坪は、焼台から全席が見渡せるギリギリ限界の広さだ。次に、繁華街ではなく住宅街、それも1階路面店であること。このスタイルは、最初の30店舗をさまざまな場所に出した結果、決まったのだという。 というのも、繁華街に出した店は賃料が高すぎ、ネオンもギラギラしていて赤い看板が埋もれてしまったそうだ。 反対に、住宅街の店は目立って家族連れも来るようになり、自然に「家族連れでも行ける焼鳥店」というイメージができた。そうなると、繁華街の雰囲気はますますそぐわず、子供に危険も伴う。そこで、住宅街の地域密着店を目指すスタイルになったのだ。
店主との契約形態については、基本、2つの方法がある。1つはリース方式。初期費用149万円で加盟し、本部から店を借りて運営をスタートする形だ。ランニングコストとしては、毎月家賃12万~16万円、店舗使用料12万~16万円、ロイヤリティ3万3000円、設備費用1万1000円を本部に支払う。またこの場合、大吉の空いている店舗を指定されるため、店の場所を選ぶことはできない。 2つ目はオーナー方式だ。初期費用1800万円で店舗を購入し、ロイヤリティのみを払う形である。たいていのオーナーは1つ目のリース方式を選び、経験を積みながら店舗購入資金1800万円を貯金。溜まったらそのまま店を買い取るか、故郷で開店してオーナーになる。月々の店舗使用料がもったいないし、出店場所を選びたいからだ。