「それが気持ちのいい商売や」 わずか月額3万3000円でフランチャイズ展開する「やきとり大吉」。本部、店主、顧客の三方よしを実現した“人情派”な儲け方とは?
1977年の創業以来、独自の「生業(なりわい)主義」でファンを集め、急成長を遂げた「やきとり大吉」(以下、大吉)。多いときには年間120軒店舗を増やし、創業から20年で1000軒を達成した。 【画像11枚】「赤と黒の看板」でおなじみのやきとり大吉。知ってるようで知らない店内の様子はこんな感じ 店主の高齢化で現在は491店舗に減っているが、2023年にふたたび大きな注目を集めることになる。「鳥貴族」を経営するエターナルホスピタリティグループに買収されたのだ。 エターナルホスピタリティグループの大倉忠司社長は買収の理由について、「昔から大吉のファン。鳥貴族として独立してからも、大吉との差別化をずっと意識してきた」と公言している。そこまで大倉社長を惚れ込ませた要因はなんなのか。大吉の魅力と、他に類を見ないビジネスモデルに迫る。
■最大の強みは、店主が焼台に立つ「生業主義」 大吉は直営が1軒もなく、全店個人経営のFCチェーンだ。通常、FCチェーンの多くは、FC運営会社が数店舗まとめて運営していることも多い。しかし、大吉は個人としかFC契約を結ばない。 【画像11枚】「赤と黒の看板」でおなじみのやきとり大吉。知ってるようで知らない店内の様子はこんな感じ その理由は、店主が店の一番の魅力であり、強みだと据えているからだ。 焼鳥を売っているようで、店主の人柄や店主との会話を売っている。看板はあるけれど、実際は、「店主の魅力で成り立つ個人店」という位置づけなのだ。
これを大吉では「生業主義」と名付けている。生業主義のポイントは以下の3点。 1. 店主自らが仕入れを行い、食材の品質を直接確認する 2. 店主が毎日焼台に立ち、自らの手で焼鳥を焼き上げる 3. 接客も店主が中心となり、常連客との関係を築く この3点の遵守により、大吉は各店舗に個性を持たせつつ、品質と顧客満足度の高い運営を実現しているのだ。 運営会社ダイキチシステムの近藤隆社長は、生業主義の徹底について、「店は店主とお客様の信頼関係から成り立っている、という飲食店の根本的ルールだと考えています。だから、なんらかの事情で店主が焼台に立てなくなった場合は、店を閉めてもらっています」と説明する。