歌手・山川豊、低迷期に兄・鳥羽一郎が『兄弟船』で大ヒット「悔しい思い」
兄・鳥羽一郎に対して悔しい思いを抱いた時期も
――家族といえば、『兄弟船』などのヒット曲で知られる兄の鳥羽一郎さんも演歌歌手として活躍されています。 山川:そうですね。デビュー曲の『函館本線』で「日本レコード大賞」や「日本歌謡大賞」の新人賞を頂いて、6年目の時に『ときめきワルツ』で「紅白」にも出させて頂きました。でも、それからしばらく低迷期が続いて、僕にとっては芸能界の厳しさ、つらさを知る時期になったのですが、そういう時に兄貴がドドーンといっていましたから。兄弟ということで、どうしても比べられることがたくさんありましたし、悔しい思いもしました。 ――兄弟だからこそ意識する部分も? 山川:あの頃の兄貴はスゴい勢いでしたからね。「置かれていってしまうんじゃないか?」って焦りもありました。自分も、もっと頑張らなくちゃいけないというとき、今回の曲も手掛けてくださった(作曲家の)徳久広司先生から『しぐれ川』を頂いて。「これに賭けてみよう!」と、デビュー当時に戻った気持ちで4年くらい大切に歌い続けて…。 ――『しぐれ川』は今でこそ代表曲の一つですが、すぐにヒットしたわけではないんですね? 山川:色んな地方のスナックで歌わせて頂いたり、“夜のキャンペーン”も随分やりました。「紅白」にも出て、多少はみなさんに名前や顔も知って頂いていたので、「なんで今さらスナックに行くんだ」といった声を耳にすると辛い思いもありましたが、もうちょっと頑張ろうと。結果的に『しぐれ川』が良い兆しになって、次の『夜桜』で「紅白」にカムバックできて、「日本レコード大賞」で最優秀歌唱賞を頂いて、『アメリカ橋』のヒットに繋がったんじゃないかなと思います。
パワースポットとして国内外から注目を集める「石神さん」
――そうした地道な努力の源が海女さんとしても懸命に働く母親の姿なんですね。くしくも今回の新曲に出てくる「石神さん」は海女さんゆかりの神様とか? 中村会長:相差町には現役の海女さんが100人近くいて、日本一海女さんが多い地域なんです。元々、地元の「神明神社」に祀られている「石神さん」は大量祈願だったり、安全祈願として海女さんたちが信仰していて。それが由縁で“女性の願いを一つだけ叶えてくれる”パワースポットとして親しまれています。 ――日本国内のみならず、海外からの参拝者も多いとか。 中村会長:10年ほど前は年間4万5000人くらいの参拝者数だったのですが、5年ほど前に年間25万人を突破して、今も20万人近くを維持している状況です。 ――山川さんの新曲は同町の公認ソングにも選定されていますが、地元でもかなり人気を集めているとか。 中村会長:みんなよく歌っています。一日一日を大切にし、今日に感謝しながら生きるという海女さんの心情や日常を上手く表現していてピンとくるものがありました。それに、山川さんには7年前に地元の中学校で「海女サミット」が開催された時にゲストとしてお越し頂いたのですが、女性の心情を見事に歌い上げる姿がとても評判が良くて。この曲は相差町の公認ソングにピッタリだなと。 ――同曲は5月のUSEN演歌歌謡曲ランキングで1位を獲得。YouTubeにアップされた同曲の公式ミュージックビデオ(MV)は公開から2カ月足らずで、演歌としては異例の30万再生回数に届く勢いを見せています。 山川:演歌は2年目が勝負だと思っているのですが、それにしても、今の時点で「新曲いいね」といってくださる方や歌ってくださる方が多いのはうれしいです。歌の力のすごさを感じています。 ――5月には相差町でのコンサートも実現しましたが、「石神さん」のパワーは感じた? 山川:相差町にはMVの撮影でも伺ったんですけど、すごいパワーを感じました。 中村会長:撮影の時に、急に「海女さんを呼んでください」とスタッフの方に頼まれて。急きょ地元の海女さんたちに来てもらったんですよ。 山川:やはり海女さんがいるだけで映像が映えるというか、グッとますからね。それで中村会長に「何とかしてください」と。これが地元の良いところ。故郷の人たちは何とかしてくれますから(笑) 中村会長 集まって頂いた海女さんたちも、とても喜んでいましたよ。 ――それも山川さんの人柄あってのことでしょうね。9月16日には東京・浅草公会堂で還暦を記念したコンサートも控えています。 山川:そうですね。オープニングはこの歌でいこうと思っています。ちょうど今、三重の雰囲気が出せるように(舞台演出を)考えてもらっているんですよ。 ――それは楽しみですね。最後に、中村会長から山川さんにエールをお願いします。 中村会長:本当に良い曲だと思いますし、地元のみんなも応援しています。ぜひ、さらなるヒットに繋げてこの曲で「紅白」に復帰してほしいですね。 山川:ありがとうございます。僕自身、この曲で「紅白」を目指して頑張っていきたいなと思っています。そのためにも、まずは全国各地に行って多くの方に生の歌を聴いて頂いて、この曲の素晴らしさを広げていきたいです。 ■山川豊(やまかわ・ゆたか) 10月15日生まれ、三重県出身。1981年に『函館本線』で歌手デビュー。『アメリカ橋』や『ときめきワルツ』など数多くのヒット曲を世に放ち、「NHK紅白歌合戦」には86年の初出場以降、通算11回出場。92年には「日本レコード大賞」で最優秀歌唱賞、98年には『アメリカ橋』で「日本作詩大賞」、15年には『螢子』で「日本作詩大賞 日本作詩家協会創立50周年記念賞受賞」を受賞する。趣味はボクシングでC級ライセンスを所持している。