「中国も手を出したがらない」ベトナム特有の事情が関係 日本が支援「ホーチミンメトロ」いまだに開業しない謎
ベトナムには2011年に着工し、2015年に開業するはずが6年遅れとなったハノイメトロ2A号線という先例がある。同線は中国のODAで建設され、2018年にはほぼインフラ部分は完成していたものの、ベトナム側の行政手続きや許認可の遅れで、2021年にようやく開業した。 日本の関係者内では、ハノイとホーチミンの力関係から、ハノイメトロ2A号線が開業すれば、ホーチミンメトロ1号線の事態も好転するのではないかとも囁かれていたが、打開には至らなかった。それどころか、今置かれている状況は、かつてのハノイメトロ2A号線とほぼ同じと言っても過言ではない。その状況とは、簡単にまとめれば以下の通りだ。
1:土地収用や立ち退き補償の遅れ、土地価格の高騰 2:手続きの遅れによるプロジェクトの停滞や未払いの発生 3:プロジェクトの遅れによる運営会社の資金枯渇 4:第三者機関によるシステム・安全性評価認証の問題 まず1点目は、避けて通れない土地収用の問題である。ベトナムは社会主義国であるため、国や行政が強権的に用地を取得できるように思えるが、現在、ベトナム政府は強制収用を行っていないという。ホーチミンメトロ1号線は、極力民有地を避けて建設されているが、バソン駅前後の区間など、地下区間での土地収用に最後まで時間を要したと言われている。また、計画段階の2006年頃に比べて土地価格が急騰しており、当初計画よりも30兆ドン(約1872億円)以上のコストアップとなった。
ただ、この問題はベトナムに限らず、各地の鉄道プロジェクトに言えることだ。これに時間を要したとしても、なんとか帳尻を合わせて計画通りに開業する例は多い。 ■役人の責任逃れが影響? 要因は2点目以降の問題にあり、最大の問題は2点目だ。というのも、国家プロジェクトでありながら、所管省庁や行政の担当役人が、手続きや各種許認可に関する書面にサインを入れないというのだ。この手の話はベトナムで活動する多くのビジネスマンからも漏れ伝わってくるが、とくに新しいプロジェクトに対して、後々の責任追及を恐れてサインを入れたがらない傾向があるという。