「兄頼朝」と「鎌倉殿頼朝」の間に生じた葛藤。「菅田将暉の義経」が切なすぎて、心に沁みる【鎌倉殿の13人 満喫リポート】
ライターI(以下I):鶴岡八幡宮、永福寺と並んで鎌倉を代表する寺院だったのが勝長寿院。頼朝(演・大泉洋)の父義朝の菩提を弔うために建立されたものですが、この落慶法要が行なわれたのが文治元年(1185)9月3日。壇ノ浦合戦から約半年後になります。 編集者A(以下A):劇中、文覚(演・市川猿之助)が頼朝らの父義朝のしゃれこうべを持ってくる場面が登場しましたが、細かいところはともかく、義朝のしゃれこうべが京都から鎌倉に移送されたことに文覚が関与したのは史実のようです。 I:今週は、勝長寿院の落慶法要に便乗して、義経(演・菅田将暉)に鎌倉に帰ってもらおうという趣旨の話が展開されました。父義朝の法要ともなれば、兄弟が揃うというのも自然な話です。 A:一連の文覚登場シーンですが、私は作者が文覚、あるいは文覚的なキャラクターが大好きなんだろうなと思って面白がって見ています。実際の文覚は後白河院にも頼朝にも食い込んでいるキャラクターで、第13回で登場した頼朝の命で江ノ島に弁財天を勧請して藤原秀衡(演・田中泯)の調伏をしているというのも史実。コミカルに演じられていますが、常識を度外視して、荒っぽく破天荒に物事を進める様が、意外に丁寧に描かれている感じがします。実際のイメージは勝新太郎さんに近いのかなと思ったりしています。 I:私は文覚と頼朝のやり取りが好きです。荒っぽいですが、どこか憎めない。知人にああいう人がいたら楽しそうです。 A:文覚とその弟子上覚の弟子である明恵上人が詠んだ和歌が、文覚とその周辺の雰囲気を伝えてくれます。有名な〈あかあかや あかあかあかや あかあかや あかあかあかや あかあかや月〉ですね。単純に「わー、月が明るい! 明るいよー」という思いをストレートに詠んだ歌です。 I:自由奔放で無邪気に楽しむ様が伝わってきますよね。しかし、文覚を見ていると、コンプライアンスが厳しく問われる現代社会では生き辛いキャラなんだろうと感じます。そうしたキャラを敢えて主要キャストとして登場させているということは、何か作者の強烈なメッセージではないのかなと、勝手に思っています(笑)。