心眼(10月2日)
デジタルよりアナログ、機械より手業が勝る。その一例が犯罪捜査にある。容疑者を割り出す際、重要な手掛かりとなる似顔絵。表情の特徴を合成して作られるモンタージュ写真より、重宝されている▼出会った相手の印象を、より忠実に再現できるとされる。場所を選ばず、被害者や目撃者の記憶が鮮明なうちに素早く描ける利点も。県警は13年前、似顔絵捜査官制度を開始した。現在は職員約120人が指定を受け、研修を積んでいる。日々目にするさまざまな「顔」を脳裏に焼き付けてもいるのだろう。身が引き締まる思いがする▼似顔絵の大家が逝った。45年にわたり、週刊誌で時の政治家や芸能人を風刺した山藤章二さん。ユーモラスな画風に、ピリ辛なコメントで人気を博した。自書「ヘタウマ文化論」の前書きで、人には「心眼」があると説いた。〈心の深い所にある網膜にやきついたもの〉という。作品が生まれる原点だったか▼1日に発足した石破新内閣は早くも、荒波にさらされているようだ。本紙に掲載された閣僚のイラストが、それぞれの力量や胸の内を推し量る「手掛かり」になれば幸いだが…。読者の肥えた心眼にさて、どう映っているか。<2024・10・2>