J・キャメロン監督と和歌山高専 地球最深部で最圧好む新種バクテリア発見
深海という限られた環境で進化適応 薬剤開発へ期待
今回発見した「(学名)Colwellia marinimaniae」は低温高圧力でのみ生育できる「好冷絶対好圧性細菌」であり、「深海」という地球上の限られた条件に進化適応した興味深い生き物と言える。この株は、血液をサラサラにする効果が期待されているEPAや、脳や神経系の発達に効果があると言われているDHAを15%程度含んでいるため、今後特殊な環境で生育する極限環境生物を利用した薬剤開発へ期待がかかる。
地球最深部の生命体の確認「生物の新しい生存環境を明示するもの」
また、本研究のチームリーダーである米国スクリップス海洋研究所のダグラス・バートレット教授は、「今回の地球最深部での生命体の確認と培養技術の確立は、生物の全く新しい生存環境と深海生物調査技術の発展を明示するものであり、今後は生物多様性や生物工学のポテンシャル、そして生物の極限環境への進化適応研究が、さらに展開することに期待している」と話す。 本研究を実施した谷川公実子さん(現在、奈良先端科学技術大学院大学修士課程)は、「特殊な環境下で行う実験は常識が通用せず大変でしたが、地球の生命の多様性に壮大なポテンシャルと生命の力を実感しています。この研究を通じて、生命の限界について研究をすすめ、新薬の開発や新しい殺菌技術の開発に貢献できれば」と語っている。 本実験は11月16日付けの科学誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・システマティック・アンド・エボリューショナリー・マイクロバイオロジー」(電子版)に掲載された。 ---------- 楠部真崇(くすべ・まさたか)博士(工学) 和歌山高専物質工学科准教授。徳島大学では高圧力下での物性変化を調査し、現在は、深海微生物の進化適応や高圧殺菌技術を調査研究している。 2005年徳島大大学院工学研究科機能システム工学専攻博士後期課程修了。2012年UCSD スクリップス海洋研究所(米国)客員研究員。専門は高圧生理学、生物物理化学。