J・キャメロン監督と和歌山高専 地球最深部で最圧好む新種バクテリア発見
映画「タイタニック」「アバター」の監督で冒険家としても知られるジェームス・キャメロン氏と和歌山工業高等専門学校、米国の海洋研究所らのグループが、地球上で最も深いマリアナ海溝で、新種のバクテリアを発見しました。非常に限られた環境から見つかったこの新種は、見つかっているバクテリアの中では、世界で最も圧力を好み、低温で生きるという特性が判明。今後研究が進むと、新薬や新しい殺菌技術の開発に貢献できる可能性があると期待されます。 和歌山高専物質工学科の楠部真崇准教授が研究成果について報告します。 ----------
最も圧力を好むバクテリアの発見
マリアナ海溝チャレンジャー海淵から単離された新種のバクテリア「(学名)Colwellia marinimaniae( コルベ リア マリニマニエ)」(図1)が、これまで知られているバクテリアの最適増殖圧力を大幅に上回ることを、和歌山工業高専、米国スクリップス海洋研究所、ジェームス・キャメロン(映画監督)らのグループが発見した(写真1、2) 。これまでも、マリアナ海溝から新種のバクテリアが単離されているが、今回発見された1,000気圧を超える超好圧菌の発見は稀である。
深海ヨコエビから離されたバクテリアで実験
冒険家でも知られるジェームス・キャメロンは、2012年に実施されたDEEP SEA CHALLENGEで、地球最深部マリアナ海溝チャレンジャー海淵に潜航調査を行った(図2)。 今回発見した新種のバクテリアは、この時に採取された深海ヨコエビの一種(写真3)から単離された株である。様々な実験の結果、このバクテリアは1,200気圧(6℃)を好み、1,400気圧まで増殖することができるものの、大気圧では生育することができない特性を持っていることがわかった(図3)。
足の親指の爪が軽自動車で踏まれているような圧力
1,200気圧とは1200kgの固まりが1平方センチメートル に乗っかっている状態に等しく、これは軽自動車に足の親指の爪を踏まれ続けている感覚に近い。水圧は10メートル潜るたびに1気圧増えていくので、10,911メートルの深度を持つチャレンジャー海淵は1,090気圧のとんでもない環境といえる。 「marinimaniae」の由来はグアムを拠点とする高校生サークル「Marine Mania」をラテン表記したものであり、「Marine Mania」は地球科学をキーワードとする活動を勢力的に実施している。マリアナ海溝で二番目の深いシエラ海淵は、彼らにちなんだ名称でもあり、海を守るための活動に尽力している事に敬意を評し種名に使用させて頂いた。