岡本綾子「経験を積んで、視野を広げていくことが大事」世界の“アヤコ”がセント・アンドリュースでの女子メジャーを振り返る
「ゴルフの聖地」とされるセント・アンドリュースオールドコース(スコットランド)で開催された「第48回 AIG女子オープン」。毎日トップが入れ替わる混戦模様となった大会は、最終日、首位と3打差の4位タイでスタートしたリディア・コが2位に2打差の7アンダーでメジャー3勝目を飾りました。激戦の模様を、ゴルフネットワークで解説を務めた岡本綾子プロに振り返ってもらいました(聞き手:田中雄介アナウンサー)。 田中 4日間お疲れ様でした。今年も激しい戦いになりました。 岡本 6700ヤードという長さだけではなく、全英ならではの風が吹き荒れていましたからね。4日間、ショットごとに頭を使わなければならなかった選手たちは、本当にきつかったと思います。 田中 全英女子がセント・アンドリュースオールドコースで行われるのは、今年で3度目になります。 岡本 私がやっていたころは、オールドコースでやるなんて考えられませんでした。 田中 まず、4日間を振り返っていただけますか。 岡本 3日目までの上位3人、シン・ジエ選手、リリア・ブー選手、ネリー・コルダ選手が、そのまま三つ巴戦を繰り広げるのかなと思っていたんですけど、優勝したのはリディア・コ選手。ゴルフは最後まで分からないものですね。 田中 まずはネリー・コルダ選手。全米オープンでは初日に10ストロークを叩いて、その後2ヶ月半低迷していたんですが、復活してきました。 岡本 誰にでも波はあるものでね。もともと強い選手なので、ちょっとしたきっかけがあれば復活するとは思っていましたが、今大会で強さが戻ってきたようですね。 田中 しかし、思わぬ所で崩れました。予選ラウンド2日間でボギーはわずか1個だったのに、3日目のバックナンで40を叩き、最終日も14番のパー5でダブルボギーを叩いてバックナインは38。決勝ラウンドのバックナインでの失速が響きました。 岡本 一方のリディア・コ選手は、4日間でボギーが6つしかなく、ダボは1つもない。こういう堅実なゴルフが理想ですよね。技術的にも素晴らしい。上手さという点では、シン・ジエ選手も引けを取らなかったんですが、シン・ジエ選手のゴルフを見ていて、改めて勝つことの難しさを知りました。 田中 シン・ジエ選手のコメントを聞くと、最終日はアゲンストが強く、グリーンに届くクラブがなくなってしまった、といっていましたが。 岡本 確かに最終日は、それまで2時の方向から来ていたアゲンストが1時の方向から来ていましたからね。あの風が吹くと、グリーンに届かせるのは難しい。 田中 しかし、リディア・コ選手も飛距離が出る方じゃない。 岡本 リディア・コ選手の場合は、もともと届かなければ届くところに落として、それでパーを拾いながらチャンスが来るまで待つというタイプ。いつものプレーを淡々とやっていた感じがします。 田中 両者の間では、グリーンを狙うショットのマネージメントが少し違っていたということですか。 岡本 それもありますが、球筋も違います。リディア・コ選手はフェード系とストレートボールを操る選手。シン・ジエ選手はストレート系で、風を使ってグリーンに乗せてくるのが非常にうまいタイプ。2人とも技術的には素晴らしく、どちらがどうというわけではありませんが。 田中 西郷真央選手も初日4位タイ、2日目5位タイ(最終的に7位タイ)と健闘しましたが、インタビューではずっと「悔しい」とこぼしていた印象があります。自分には何かが足りないと。 岡本 いいんじゃないですかね、欲があって。また、自分に対して厳しいということですよね。ただ、別の確度から見れば、欲が深すぎて余裕がないっていう感じもしました。リディア・コ選手にしてもシン・ジエ選手にしても、飛ばないけれどショットメーカーとしての余裕があるという感じがするので。