WBSS準決勝に挑む井上尚弥に本当に死角はないのか?
「技術的にはロドリゲスは過去最高レベルの相手で間違いないでしょう。おそらくロドリゲスは1、2ラウンドは用心して様子を探りながら無理はしません。互いにジャブを突きながら井上選手の方もロドリゲスの力量を見極めることに時間を使うと思います。技術戦になるポイントは、井上選手よりも上背のあるロドリゲスが打ち下ろすような感覚で狙ってくる右のカウンターへの対策です。ロドリゲスは、井上選手の左、あるいは右の打ち終わりにパンチを上からかぶせてくるでしょうし、カウンターのタイミングでパンチを合わせてきます。井上選手は、その右ストレートをもらわないように中へ入っていかねばなりません。そのためにはフェイントをかける、頭の位置を変える、ステップワークを使うなどのテクニックで、“ずらす”という作業が必要になってきます。この部分がいわゆる技術戦なのです」 技術戦は互いのカウンターの攻防だ。 「ただもしロドリゲスが井上選手に怖さを感じてしまったら、この上背を使ったパンチは狙えないし、逆に井上選手が見切ることに時間がかからなければ、すぐにパワーが全開になるでしょう。もし膠着戦になったとしても最終手段として井上選手には強引に押し切れるパワーがあります。スパーで階級が上の選手とやっている井上選手にしてみれば、ロドリゲスに恐怖を感じることもないと思います。皆さんが予想されているように、また早いKO決着もあるのかもしれません」 飯田氏も井上のKO勝利を予想した。 では、井上に死角はないのか。 飯田氏はひとつだけ危惧する点があるという。 「雑になることです。マクドネルとの試合で露呈したのですが、上背のある選手を強引に倒そうとすると腰が浮いて隙が出ます。ロドリゲスは左のボディアッパーが得意ですが、腰が浮くと、それが当たる角度が生まれてしまうのです。早いKOを井上選手が宣言しないのは、そういう雑なボクシングになることを戒めているのでしょう。上目づかいで腰を据えて戦うことを徹底すべきです」 昨年5月に行われたジェイミー・マクドネル(33、英国)とのWBA世界バンタム級戦も1分52秒で片付けたが、強引にいきすぎてガードやポジショニングが荒くなり右を“被弾”するシーンがあった。計量に遅刻するなど一連の行事を通じてマクドネル陣営の態度にイライラさせられた井上が感情をコントロールできていなかったことが原因。今回も、公開練習でロドリゲスの動きを動画撮影しようとした真吾トレーナーが相手のトレーナーに小突かれるなど不穏な前哨戦があった。井上が異国の地のビッグファイトで、感情をどこまで抑えて冷静な技術戦をスタートできるかどうかもポイントだろう。 それさえできれば3,4回でKO決着である。ロドリゲスのガードは開き気味で、そこに内側からねじこむような井上の高精度のジャブは当たるし、ロドリゲスは下がってしまうだろう。井上相手に下がると、もうジ・エンド。あとは“モンスターの右”で血祭りである。グラスゴーの地から井上が再び世界へ強烈なインパクトを発信することになりそうだ。