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テレビが言いにくいコロナ報道の不都合な数字【元芸人・作家の松野大介】

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 テレビ(ワイドショーやニュース報道)は連日、感染者数を報じている。コロナにおけるテレビの煽り報道について評論を寄稿し続ける元芸人の作家・松野大介氏が、テレビが伝えない数字で、日本式インフォデミックをユニークに解説。 この記事の写真はこちら  “未知のウィルス”と言われても、8ケ月が経ってわかったことも多い。  今は「テレビ報道が変だ」と多くの人が思っているし、「検査が増えたから陽性者が増えたし、発症してない曝露が多い」「死亡は極端に減った」「ウィルスが生存するために弱毒化したのか?」などと考えている人々も増えている状況ではないか。  しかしテレビは春と同じように、他県から来る(帰省する)人が拡げる感染者(陽性)数を報じ、科学的なデータにはあまり触れない。今は「テレビを作る側」と「観る側」が乖離しつつある。  冷静に新型コロナに対応するため、今回もテレビが触れない数字を紹介する。専門家ではないので、コロナとは違う数字も混ぜた。 ◼︎東京のコロナ感染による死亡者の平均年齢 79.3歳  7/31の東京都の発表で、6月末までに新型コロナに感染して死亡した325人の平均年齢は79.3歳。80歳代の感染者の死亡率は33.9%に及ぶ。逆に50歳以下の死亡率は0.5%。  高齢者が亡くなるのは仕方ないと言いたいわけではない。こういうデータを発表しないのがフェアではない。  若年層の致死性はインフルエンザより低いとされるデータも、テレビはほぼ触れない。日本では30代以下の死亡はわずか。  東京の死亡者は7月は10名以下だが、小池都知事が会見で、「今日の感染者数○○○人、死亡者数ゼロ」と言っても、報道を観ると、死亡者数のところはカットして放送されているケースも目立つ。 (東京都コロナ感染による死亡者平均年齢ニュース) https://www.yomiuri.co.jp/national/20200802-OYT1T50157/ ◼︎イタリア抗体保有率2.5%  8/5のニュースでは、イタリアで大規模な抗体検査(過去に感染していた割合がわかる)の結果が2.5%だったとのこと。  つまり国民の2.5%が感染していたと推定。これは確認された感染人数の6倍。推定感染者全体のうち27.3%が一度も症状を発症してなかったという。  これはNHKで「実際の感染者は6倍」と強調されて報じられたが、民放の報道やワイドで積極的に取り上げることはなかったようだ。  前回触れた通り、6月の厚生労働省の抗体検査で東京都の抗体保有率が0.1%だった時、専門家は感染拡大しなかったことを認めた。それまで「東京はニューヨークのように10倍いる」と煽っていたテレビには、「流行は来てなかった」と言った番組もある。1万4000人ほど(1400万都民の0.1%)と答えが出たのだ。  また抗体検査を実施し、低い抗体保有率だった場合、またも「流行が来てなかった」と認めざるを得ない。感染状況が比較的はっきりするので、テレビはあまり抗体検査には触れないのではないか。  ちなみにイタリアは確認された感染者は約24万人で、死亡は3万5000人以上。日本は約5万人、死亡は1058人(※NHKまとめ 8/11時点)。 (イタリア抗体検査結果) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200805/k10012551521000.html ◼︎保健所数 469  そのイタリアは医療崩壊したことが日本でも取り上げられた。EUから求められた財政健全化として、政府が医療の予算を削り、この数年で相当数の病院が閉鎖したことによる。  日本も、医療を崩壊させないために感染者を出さないという事態がある。  保健所数は94年の847から、2020年は469。つまり四半世紀で378が減った(※全国保健所長会/図版A)。  春先のニュースはこの件に触れていたが、やがて「感染拡大で医療崩壊」という単純なフレーズが独り歩きしていった。  感染者が減った5月から政府がやるべきことの一つは医療体制の拡充だったのに、医療に大幅な予算をつけたという話は聞かれない。テレビも倒産する大学病院のニュースは報じるが、予算をつけるよう政府に訴える声は少ない。報道は視聴者を煽るより、政府を批判することが重要なはず。 ◼︎世界感染者数ランキングと感染率 日本は47位と、147位?  感染者数(累計)の世界順位では、日本は現在47位(※8/13のGoogleニュースより)。上にはグアテマラが43位で、シンガポール、ポルトガル、ポーランド、日本。一つ下の48位にホンジュラス。  前回は感染率は出さなかったが、人口数世界11位の日本はいくらか下がると予測される。  人口100万人あたりの感染者数は、この日の発表で394人。  感染者数で上にいる46ケ国でそれより少ない国は中国大陸の1ケ国のみ。下のランクで394人以上は、101ケ国!   見落としがあるかもしれないが、だいたい日本の感染率は現在147位となる。  近い国・地域は、ボツワナ(100万人あたり344人)、ジャマイカ(378)、ウルグアイ(388)、レソト(389)、ベリーズ(433)。(※8/12朝のGoogleニュースより/時刻により推移)  そういう国のコロナの状況を報道で観たことはない。報じられるのは、100万人あたり1万5000人超感染の米国から、4000超のイタリアなど感染拡大国。 ◼︎日本の年間死亡者数 137万人  厚生労働省によると、2019年の国内の死亡者推計数は137万6000人。多くが高齢者であることは言うまでもない。  インフルエンザは1万人が死亡する年もある(いっかんしてテレビは触れない)。今冬も730万人が感染(例年は約1000万人)。冬に集中するが、仮に月で割っても約60万人、1日で2万人が感染していることになる。新型コロナのように無症状を検査することはほぼないから、陽性者ではなく感染者だ。インフルは新型コロナよりは子供も多く死亡するが、やはり高齢者が多い。  ウィルスと関係ないが、交通事故死は昨年、3215人。5割以上が高齢者。  消費者庁の報告では、驚くことに「不慮の窒息」で死ぬ人が1月だけで1300人という。なぜ1月かというと、餅を喉に詰まらせる人が多いからと。コロナによる死亡より多いとは。こちらは高齢者が9割。  だからといって餅を自粛させないし、餅業者は休業しない。交通事故や餅と、感染症を比較するのはナンセンスとわかっているが、どちらも人が死んでいる(主に高齢者)ことには違いない。  日本は幸いにも新型コロナの死亡者がインフルエンザよりかなり少ないのだから、それに見合った科学的な対策をとれば、今のところは良いはずだ(医療の拡充や指定感染症から外す議論も必要だろう)。  日本のコロナ問題は、テレビのインフォデミックと、政府の無策により、人災と化している。

文:松野大介 

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