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「早め」「積極的」台風10号、避難行動の転機に

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西日本新聞

 九州の西方を駆け抜けた台風10号に伴い、宮崎県椎葉村で土砂崩れが起き4人が安否不明となり、犠牲者や負傷者も各地で少なからず出た。自然の脅威を改めて見せつけられた。その一方、自身と大切な人の命を守るため、早めに積極的な行動を取る人も目立った。避難行動の転機となり得る出来事だと受け止めたい。 【写真】強風で飛ばされた自動車整備工場の屋根。歩道をふさぎ、国道3号にもはみ出した=7日、福岡市  今回の台風は「特別警報級」がキーワードだった。大雨など気象に関する特別警報は2013年に新設された。それが台風を対象にして、沖縄本島周辺以外で初適用される可能性が語られ、気象庁は台風9号がまだ九州に接近中だった2日、10号に関する異例の警戒呼び掛けをしていた。  以後、九州の新聞、放送局はいずれも「早めの避難準備」呼び掛けを切れ目なく続けた。結果的に被害が少なかった地域には「特別警報級」は過剰報道、空振りに思えたかもしれない。

 ただ、最大瞬間風速が過去10年の観測史上最大を記録した地点は福岡市博多区など多数あり、接近時の中心気圧(940~950ヘクトパスカル)も、昨年、東日本で多摩川や千曲川などを氾濫させた台風19号の上陸直前(955ヘクトパスカル)より低かった。特別に警戒すべき台風だったのは客観的事実だ。  多くの市民は、素早く動きだしていた。記者が登録している会員制交流サイト(SNS)のやりとりには、3日ごろから「避難のためホテルを予約する」「郷里の老親を新幹線が動いているうちに呼び寄せようと説得した」-そんなコメントがあふれていた。

 自治体も、鹿児島県の離島の三島村、十島村が高齢者ら配慮の必要な人を、ヘリや船で鹿児島市に集団避難させるなど踏み込んだ。政府も国土交通省の管理ダム以外でも、事前放流で貯水容量の確保に動いた。  台風の勢力を考えれば椎葉村のような事態が相次いでも不思議ではなかった。直前の9号が呼び水になった面もあるだろうが、それぞれの境遇や立場に応じて選んだ最善の危機管理行動が集大成された結果、と言えるのではないか。新型コロナウイルス対策を通じ、悩みながらも自身と他者のために何をすべきかを決断した経験が、下敷きになっていたかもしれない。  ともあれ、台風シーズンはまだ終わっていない。今回示された「早め」「積極的」という判断を、ぜひ、これからの災害時避難の標準としたい。 (特別編集委員・長谷川彰)

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