敦賀以西、ルート再考を 研究者有志「考える会」科学的知見で訴え
●京都で初の勉強会 北陸新幹線敦賀以西延伸を巡り、研究者ら有志は14日、京都市内で現行の「小浜ルート」で整備を進める場合の問題点を解説する勉強会を初めて開いた。地質学や社会学、地盤工学の専門家4氏が長大トンネル工事に伴う残土処理や地下水への影響に懸念を示した。北陸や関西で日増しに強まるルート再考の声を受け、科学的知見から見直しを広く訴えていく考えで、今後の議論にも影響を与えそうだ。 「北陸新幹線大阪延伸を考える有志の会」が京都JAビルで初開催した勉強会には約60人が参加した。 講演した地質学の武蔵野實京都教育大名誉教授は、現行ルートでは小浜―京都間の大部分がトンネル区間となる一方、京都盆地に断層が多く分布しているため「地下水をため込んだ軟弱な地層では事故を呼び寄せる危険性がある」とした。 田中滋龍谷大名誉教授は「一番心配されるのはヒ素汚染されたトンネル湧水が河川に流出することだ」とし、京都だけでなく福井の河川にも悪影響を及ぼす恐れがあると指摘した。八木則男愛媛大名誉教授(元金大助教授)は地盤工学の立場から米原ルートへの転換を主張。四国ではトンネルを10メートル掘り進めるのに半年かかった事例があるとし、「トンネルを長くすると不測の事態が起こりやすくなる」と警鐘を鳴らした。 鈴木康久京都産業大教授は京都には417カ所の名水スポットがあり、江戸期の史料として名水に関する番付やすごろくが残ることからも、古くから水を大切にする文化が根付いていたと解説。トンネル工事の影響で地下水が使えなくなれば和菓子店や銭湯、染物・織物の職人、ホテルなど幅広い産業に支障を来すとし、市民が地下水の大切さを認識できるような条例をつくるべきだと訴えた。 終了後、有志の会の代表を務める今本博健京大名誉教授は、石川県議会などが「米原」を含むルート再考を求める決議を可決したことに触れ、地方の声に背中を押され、現行ルートの問題点を主張することにしたと強調。「小浜」の工期や事業費が当初の見込みから大きく変わる中で「別のルートを議論するきっかけにしたい。政治主導の『我田引鉄』ではなく日本全体を良くする視点で検討が進むよう研究者仲間を増やし問題提起する」と述べた。 月1回ペースで勉強会を開く。次回は21日に中川大富大特別研究教授が講演する。世話役を務める日本維新の会の嘉田由紀子参院議員(前滋賀県知事)は「エビデンス(根拠)を積み上げ、米原経由での延伸を主張したい」と話した。