「非常戒厳」の衝撃、PTSDの可能性はないのか [韓国記者コラム]
【12月16日 KOREA WAVE】韓国での3日の「非常戒厳」宣布は、国民全体に深い不安と衝撃を与えた。戒厳令の宣告、国会の進入、戦車の動員といった状況を目撃した多くの市民から、「国を失ったような虚無感」「道路上の戦車を思い出して怖い」といった声が寄せられている。精神科専門医らは、この前例のない事態が国民の精神的健康を脅かす可能性があると警鐘を鳴らしている。 韓国において戒厳令は歴史的にクーデターと結びついてきた。今回の戒厳令は、単なる法的措置ではなく、1980年の5・18民主化運動当時を連想させる社会的恐怖を喚起させたと専門家は分析する。 特に若い世代にとっても、映画「タクシー運転手」や「ソウルの春」で描かれた戒厳令の記憶が強く残っており、今回の事態がこれらの映画の「再現」に見えた可能性が高い。韓国人にとって戒厳令はクーデターや社会不安の象徴であり、そのため多くの国民が深い恐怖と不安を感じたと考えられる。 一部の専門家は、このような深刻なストレスが「外傷後ストレス障害(PTSD)」に発展する可能性を指摘している。PTSDは、生命を脅かすような極端なストレスを経験した際に発症し、災害や戦争、暴力事件などが原因となる。今回の戒厳令では、国会襲撃やその映像を目撃した人々がその影響を受ける可能性が高い。 韓国全土が戒厳令の対象となったことは、この事態をさらに特異なものにしている。どの国民も「自分にも危険が及ぶかもしれない」と感じた可能性があり、これは日常的なストレスとは質が異なる。 過去の研究によると、米国の同時多発テロや韓国の三豊百貨店崩壊事故では、現場にいなかった人々や目撃者の間でもPTSDが発生するケースが確認されている。今回の戒厳令も同様に、直接的な被害を受けていなくても、映像や報道を通じて間接的なトラウマを経験した人が多いと予想される。 精神科医であるチェ・ジュンホ教授は「戒厳令により極度のストレスを経験した人々が集団的にうつ状態に陥らないためには、迅速かつ適切な初動対応が必要」と強調している。 チェ・ジュンホ教授は、軍隊で「戦闘ストレス症候群」として知られる症状に似た処置が必要だと指摘する。まず、国民に「再び同様の事態は発生しない」という安心感を与えることが第一段階だ。例えば、今回の戒厳令後に大統領が「2度と戒厳令はない」と約束したことは、こうした安心感の提供に役立つものと考えられる。 次に、事件が解決に向かっていることを示す第二段階が必要だ。責任者を処罰し、問題が適切に処理されていることを明確にすることで、国民の不安を軽減できるという。 チェ・ジュンホ教授はまた、「ストレスを軽減するには質の高い睡眠が重要」と述べ、夜遅くまでニュースを視聴することが睡眠の質を低下させ、ストレスを増幅させる可能性があると警告している。 特に、1980年の民主化運動を経験したり、家族や知人が犠牲になったりした人々の場合、今回の事態がフラッシュバックを引き起こすリスクが高い。こうした場合には、専門医の助けを借りることが推奨される。 チェ・ジュンホ教授は「日常生活に支障をきたすほどの恐怖や不安を感じている場合は、精神医療の専門機関を訪れるべきだ」と述べた。また、集団的なトラウマを軽減するため、今回の戒厳令事態がどのように解決されたかを透明性を持って公表することが求められると強調した。【MONEYTODAY チョン・シムキョ記者】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
KOREA WAVE