「手間増えただけ」ため息も…悪循環で利用低迷する“マイナ保険証”
マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の利用が低迷している。カード読み取り機を導入した全国の医療機関・薬局約4万施設で、今年4月中に従来の保険証は約3400万回使われた一方、マイナ保険証は約20万回しか使われなかった。そもそもカード自体を取得している国民が約4割にとどまっているのに加え、患者にとってメリットを感じられる仕組みになっていないのが原因のようだ。普及の低さが医療機関側に導入をためらわせる「悪循環」となっている。 【画像】マイナ保険証導入と患者の負担増 カードの交付開始は2016年。取得するかどうかは任意で、交付率は44・7%(今月1日現在)。昨年10月に始まったマイナ保険証の運用は国のカード普及策で、取得者はあらかじめ専用サイト「マイナポータル」で保険証をひも付けしておく。医療機関・薬局の窓口で読み取り機にカードをかざして手続きをすると、診察や投薬を受けられる。
国はマイナ保険証の利点を、(1)医師・薬剤師が投薬履歴や特定健診(75歳以上は後期高齢者健診)のデータを閲覧でき、適切な医療を受けることができる(2)高額療養費制度の「限度額適用認定証」を用意しなくても、限度額を超える支払は免除される(3)転職や転居をしても、切り替えなどの手続きが不要-などと説明している。 ただ、読み取り機を設置している医療機関・薬局は全体の20・8%(同5日現在)。多くの人にとって身近な医科診療所に限れば、7カ所に1カ所の割合でしか置かれていない。マイナ保険証を使える所が少ない。
◆ ◆ 「手間が増えただけで、投資に見合う効果は感じられない」。昨年10月に導入した九州中央病院(福岡市南区、330床)の担当者はため息交じりだ。 国の補助金を活用しても、読み取り機と専用回線の設置で約270万円の手出しが生じた。さらに回線使用料や保守点検などの維持費は年間約24万円かかる見通し。新たな負担分を補うには、マイナ保険証の利用に伴う診療報酬加算(初診70円、再診40円)にすがるしかない。それには少なくとも通院患者の2割に使ってもらう必要があるが、今年5月末までの利用は289回で、0・1%。1日に1人いるかいないかといった状況という。