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茂木健一郎──人類の新しい“ルネッサンス”に期待する【GQ JAPAN連載特集:希望へ、伝言】

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GQ JAPAN

脳科学者の茂木健一郎さんは、ニュートンのように「創造的休暇」を過ごしたいと願っています。 【そのほかのメッセージを読む】錦戸亮、美輪明宏、香取慎吾らが緊急参加!

──あなたの現在の日常について教えて下さい。コロナ問題以前と変わったこと、新しい習慣、仕事や家族との向き合い方、その他この期間に考えたことなど、どんなことでも構いません。

国内、国外の講演会や学会、研究会などの予定が全部飛び、最初は呆然としましたが、次第にそれどころではないと思うようになりました。「たいしたことはない」という正常性バイアスから始まり、徐々に「非常時」という現実を受け入れていったように思います。 楽しみにしていた東京オリンピックも、最初は予定通りできればいいなと希望していましたが、延期が決まった今はもうなるようにしかならないと達観しています。人生は思うどおりにならないという、脳科学者として以前から理論的にはわかっていたことが、自らの体感となりました。 制約のなかにこそ自由がある。ニュートンがペストの流行を避けて疎開している間に万有引力を発見したように、「創造的休暇」を持てればいいなと思っています。

──どうしても家庭内で過ごす時間が増えたのではないかと思います。この期間に読んだ本、観た映画、聴いた音楽などがあれば教えて下さい。またそのなかで感銘を受けたものがあれば、ぜひご紹介いただきたく存じます。

私は両極端で、クラシック、しかもバロックを中心とする古いやつを聴く一方で、ビリー・アイリッシュ、グライムス、ファレル・ウイリアムズなどのアルバムで今までちゃんと聞けていなかったやつを中心に聴いています。人類の音楽史を俯瞰する感じです(笑)。 ずっと机で仕事をしている以外は、毎日10キロメートルのランニングに行くのですが、走った後で入浴しながらゆっくり読む「お風呂本」としては内田百けん(モンガマエに月)が多くて、随筆の絶品と言える『阿房列車』や『まあだかい』を読み返しています。 映画は山田洋次監督の「寅さん」シリーズをビンジウォッチングしています。人と会うのが難しくなったこの時期、「寅さん」の濃厚な人間関係がいい感じのノスタルジーになります。

──先の見えない日々ですが、それでも前向きに生きるためのメッセージをいただきたく存じます。GQ読者へ、自分へ、家族へ、日本へ、世界へ……メッセージの対象はだれでも構いません。

注目しているのは、ヨーロッパでペストのひどいパンデミックがあった後の14世紀に、フィレンツェでルネッサンスが開花しているという歴史的事実です。苦しいことがあると、人々は生きるってなんだろう、価値のあることってなんだろうと、本質的なことを考えるようになるのではないでしょうか。また既存の価値観や習慣からも自由になれるように思います。 情報ネットワークや人工知能などのイノベーションが起こりつつある現代、この暗いトンネルを抜けた向こうに、人類の新しいルネッサンスが生まれると信じたいと思います。 PROFILE 茂木健一郎 1962年、東京都生まれ。専門は脳科学、認知科学。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。2005年、『脳と仮想』で第4回小林秀雄賞を受賞。2009年、『今、ここからすべての場所へ』で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。IKIGAIをテーマにした英語の著書が、31カ国、29言語で翻訳出版される。

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