「自身の世界観を絵画だけでなく着物でも表現していきたいと思います。」日本画家・高橋朋子さんの着物の時間。
髪型、半衿、着物、帯、下駄……。 レトロと現代を融合させました。
日本画のひとつとして思い浮かべるのが、四季折々の草花や鳥が美しく描かれた『花鳥風月』の絵画。 「もちろん、私もそのような絵を勉強してきました。でも今は、墨絵や墨流しといった伝統的な手法に和紙のコラージュなどを加えて、偶然の出合いと広がりを感じさせるような絵を描くことが多いです。日本古来の神仏のモチーフにハートや星などポップなテイストをプラスして、自然界からもたらされる心の歓びを表現することもあります」 子どもの頃より、書家の母親から〝書〟の手ほどきを受けた高橋朋子さん。 「実は字を書くより、絵を描いているほうが好きでした(笑)。でも、このときに書から 〝生きている線〟と〝死んでいる線〟の違いを学びました。すべての線が生きていると、そこからエネルギーが発せられます」 本格的に日本画に取り組むようになったのは高校時代。 「美術科のある学校に入学し、油絵、日本画、彫刻、デザインなどを学んだのですが、日本画の絵の具に興味を持ちました。まるで料理を作るように顔料を調合し、自身が求める色を作り出すことがおもしろく、魅力的でした」 東京藝術大学に進み、さらに深く日本画の真髄に触れていった。そして大学研究室で『源氏物語絵巻』の模写を手がけることに。 「本物と対話しながら色を見極めていく作業はまるで修行のようでした。この色だと思っても、和紙にのせてみると微妙に違う。1000年以上も読み継がれ、愛されている物語の品格、その奥にある絵師の念を汲み取ることは、こちらの器が大きくないとできない、とつくづく感じました」
伝わってきたものだけが持つ品格や思いは着物にもいえる、と高橋さん。 「今日の帯は義理の祖母が婚礼の際に締めた伊藤若冲風の鳳凰(ほうおう)が織り出された丸帯です。派手な色使いではないのに豪華。そしてここには、祖母の嫁ぐ慶びや不安が息づいている。だからこそ、その思いを生かせる取り合わせを考え、表現できる着手でありたい」