ウクライナの労働力不足が深刻 企業は女性や若者の採用を増やすも、危機的状況続く
ロシアとの戦争が続くウクライナで、労働力不足が深刻になっている。企業は深刻な労働力不足を補うため、従来男性が中心だった職種で女性の雇用を増やしている。さらに10代の若者や学生、退職者に目を向けている。 リリア・シュルハさんは、長年「座りっぱなしで退屈」だったオフィスワークを辞めて、夢だった仕事に転職した。ウクライナの大手小売企業で、トラック運転手として採用されたのだ。 ウクライナ中央銀行によると、2022年のロシアの侵攻以来、同国の労働力は4分の1以上減少している。その結果、伝統的に男性が主流だった職種に女性を雇用するケースが増えている。 一方で保育施設が不足しており、シュルハさんは子ども2人の世話を頼むため両親の元に戻らざるを得なかった。 トラック運転手 リリア・シュルハさん 「人は私を興味津々で見て、驚く。配達や荷物の積み込みをしていると、みんな携帯で私のことを撮影する。通行人だったり、いろんな人がみんな驚く。でもすぐに私たちみたいな(女性ドライバー)が増えて、みんな驚かなくなるだろう。もうすぐそういう仕事に女性が就いていることがニュースではなくなる。そうしたらみんな私のことを放っておいてくれるだろう」 ロシアによる侵攻後、女性や子供を中心に数百万人が国外に逃れ、数万人の男性が軍に動員された。 ロイターはウクライナ企業9社の代表者らに話を聞いた。彼らは人手不足と技能のミスマッチの拡大が大きな課題であると認識している。 企業によれば、農業が盛んな南部のミコライウ地域では、女性がトラクターの運転手のほか、路面電車やトラックの運転手、炭鉱労働者、警備員、倉庫作業員としての訓練を受けているという。 トラクターの運転手 マリア・コロレンコさん 「働くことがいかに必要であるかを理解した。自分や家族のためだけではない。現在残念ながら、男性たちは軍に取られている。軍に連れていかれる男性はどんどん増えている。とても辛いことだ。いま私たちは、兵士になった男性たちがしていた仕事をすべてやっている。戦争が終わって私たちが勝てば、男性たちが戻ってきて私たちに休暇をくれるだろう」 企業は賃金の引き上げや、退職者や10代の若者の雇用を増やすなど様々な対応をしている。 英ボーダフォンは若者の採用を増やすため、若者向けのプログラムを組みなおした。同社の首都キーウの研修部門責任者はこう話す。「人手不足はさらに加速していると感じている。昨年の数字を見ると、従業員の約40%が私たちの店を辞めている。労働市場における供給不足を感じる」 ウクライナ政府はパートナー国の協力を得て、国民のリスキリングを支援するためのプログラムを始めた。だが専門家は人手不足が続くと予測しており、戦後の復興を危うくする恐れもあると警告している。