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「周防正行」監督が明かす創作論 「いい監督ほど妥協する」

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デイリー新潮

【対談】映画監督・周防正行×作家・二宮敦人(2/3)

「社交ダンス」という共通項を持つ、「Shall we ダンス?」の周防正行監督と、『紳士と淑女のコロシアム「競技ダンス」へようこそ』の著者で、学生時代踊りに青春をささげた二宮敦人氏。対談で飛び出した、ヒットメーカー・周防監督流の「映画を撮るコツ」とは。  ***

「面白さ」を翻訳する

二宮 今日はぜひ監督に伺いたいことがあったんです。創作の作法に関係することなんですけど、よろしいでしょうか。 周防 もちろん、どうぞ。 二宮 監督が映画を作るとき、大事にしていることは何ですか。 周防 何を撮るかでいえば、まず自分が面白がれるかどうかですね。お坊さん、社交ダンス、大学相撲……モチーフは何であれ、それを自分が面白がっている実感を大事にして、どうしてこんなに惹かれるのかを追求するんです。  たとえば、「シコふんじゃった。」のときは、こんなことがありました。国技館で大学対抗の学生相撲大会があって、3部リーグ制のCリーグ、つまり一番弱いリーグが無類に面白いと思って、スタッフを連れて見に行ったんです。桟敷席ですから大笑いするわけにもいかず、こみ上げる笑いを必死に噛み殺しながら取り組みを見ていた。そんな僕のすぐ横で、スタッフは寝ちゃっているんですよ、退屈して。その瞬間、自分が面白いと思ったことをそのまま提出したって、自分以外の人が面白がってくれるとは限らないと悟りました。  だから、翻訳する必要があるんです。自分はこれをこういう視点で見ていて、こう感じるから面白いんだ。だから、ここからこう見てみてよ、って。 二宮 なるほど。

センスではなく「理屈」を追及する

周防 その前に作った「ファンシイダンス」では、僕がお坊さんの世界に感じた面白さをストレートに描いた。面白がってくれる人もいたけれど、ヒットはしませんでした。あれは、自分のセンスだけで突っ走って撮った映画だったんです。  そういう経験を経て、「シコふんじゃった。」で初めて、これを一般の人に娯楽作品として届けるなら、学生相撲をどの視点からどのように描けばよいのかを考え始めたんです。僕が感じている面白さは、一部の強豪校ではなく、弱小校にある。その面白さを、自分以外のたくさんの人にも感じてもらうには、一般化しないといけないことがいっぱいあるんじゃないか、と。 二宮 一般化というのは、咀嚼して普遍化するということでしょうか。 周防 翻訳に近い。 二宮 とすると、言葉を置き換えるという感じですかね。ぼくは、面白いものってどこまでいっても主観で、そもそも言語化できないんじゃないかとも思ってしまうんですけど。 周防 たしかに。面白いという感情は、理屈抜きで感じるものでしょう。でも、その面白さを人に伝えようとするなら、自分が何をどう感じているから面白いのかを追求して再構築しなきゃいけない。 二宮 その面白さの生じる文脈みたいなものを客観化する作業が大事になってくるんですね。 周防 そう、お客さん次第でしかわからない面白さにしないために、理屈を追求する。 二宮 めちゃくちゃ勉強になります!  周防 それは撮り終わった後の編集作業にも言えるんです。「カツベン!」には、フィルムの端切れを接ぎ合わせて作品を成立させるシーンを入れましたが、あれはさすがに極端だとしても、たとえば、演者が涙するシーンがあったとする。このカットの後にどのカットをつなげば、喜びの涙だとわかってもらえるのか。あるいはこのカットの前にどのカットをつなげば哀しい涙になるのか。同じ画がどんな文脈のなかで、どういう順番で来るかで、意味が全く違っちゃうわけですよ。

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