江口洋介らが語り合う!撮影は「“5時間ドラマ”に向かうような気分」<天使にリクエストを 座談会前編>
9月19日からスタートする江口洋介主演ドラマ「天使にリクエストを~人生最後の願い~」(夜9:00-9:50、NHK総合ほか)。 【写真を見る】渋すぎ!かっこよすぎる!探偵・島田を演じる江口洋介 同作は、探偵とその助手、看護師、そしてスポンサーの老女と出自も育ちも異なる4人が、依頼人の人生「最期の願い」に向き合いながら、それぞれの心の傷を見つめ、新たな未来へと踏み出していく姿を描く。連続テレビ小説「なつぞら」(2019年、NHK総合ほか)を手掛けた大森寿美男が脚本を担当する。 第1話(9月19日放送)では、酒浸りの生活を送る元マル暴刑事の探偵・島田(江口)は、資産家風の女・和子(倍賞美津子)から変わった依頼を受ける。余命幾ばくもない幹枝'(梶芽衣子)の「最後の願い」を叶えるため、富士宮に連れて行って欲しいというのだ。助手の亜花里(上白石萌歌)に背中を押され引き受けると、幹枝は、かつてここで捨てた子供を探し出して謝りたいと本当の望みを口にする。幹枝の願いをかなえるため、島田、亜花里と看護師の寺本(志尊淳)は奮闘する。 そんな江口、上白石、脚本の大森が3人で座談会を行った模様を開催。新型コロナウイルスの影響で撮影が延期され、3 人がそろうのはこの日が初めてだったという。江口らが脚本を読んだ際の印象や、個性的な出演者らの印象を語る。 ■ 江口洋介&上白石萌歌&大森寿美男の座談会スタート! ――最初に脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか? 江口:毎回人生のテーマがあって、さらに後半には歌を歌うシーンも出てきて、人生を感じさせながら歌とリンクさせていく。テーマがテーマなので、結構ウェットな芝居が多くなるのかな、と思いました。撮影延期の影響で、全5回をいっぺんに撮るというスケジュールになったこともあり、通常1回ずつ撮影していく連続ドラマとは違う、“5時間ドラマ”に向かうような気分で始まりました。 コロナ禍で、生命というものを意識せざるを得ない時期を越えての撮影だったので、島田という役を身体に入れながら演じつつ、ベースに流れている歌のような感情と言うか、ある種の切なさ、でもその向こうには希望がある――そういうことを意識しながらやらせてもらいました。 ■ 上白石萌歌「今までにない化学反応が起こりそうだなと感じていました」 上白石:脚本を読んだ時感じたのは、今までにない切り口だなと。探偵色もありながら、人の人生の最後に寄り添う福祉の精神が混ざるっていうのは、今までにない化学反応が起こりそうだなと感じていました。わたし、大森さんの作品が元々大好きなんです。 大森:本当ですか?ありがとうございます。 上白石:重いテーマなんですけど、その中で寺本さん(志尊)とのコミカルなやり取りがあったりとか、人と人との会話の温もりが脚本に詰まっていて、早くせりふを口にしたい!っていう気持ちが、自粛期間中ずっとありました。演じていてもすごく楽しかったです。 江口:僕は50歳を過ぎてますが、20代の上白石さんと志尊君、それに倍賞さんと、年齢やタイプの異なる人物が出てきて。それぞれの年代による、生や死に対しての価値観の微妙な違いが、みんなで話すシーンに織り込まれている感じがありました。 大森:そうですね。これを書いている時はまだコロナの“コ”の字も全然意識していない時期だったんですけれども、どうしても僕らの中では、死というものを、災害や不幸のように感じてしまう所があるじゃないですか。 コロナでこれだけ日常が変わってしまうのも、その根底にあるのは、死への恐怖だと思うんです。でもね、人間は誰しも、最後は死を迎えるわけで、それがそれこそ最大の不幸であるとしたら、人生の最後に最大の不幸が待ってるって思うのも、なんか辛いじゃないですか。 江口:そうですね。 大森:でも、生き残ってしまった人にとって、どうしても受け入れがたい死もあるわけです。そういう死も見つめていかないと、やはり死を美化する物語になってしまうと思ったんです。 死と生というものが、表裏一体ではなく、両方表にあって、人間の通る道の上に生も死もあるということを、当たり前のように描いていかないと、本当の人間の背負っている宿命みたいなものが見えてこないだろうなと。 主人公の島田は、物語の最初、絶望の淵にいるような、一番受け入れがたい死を背負った状態でスタートします。自分の人生と向き合えなかった主人公が、人の人生と向き合うことで、本来の自分を取り戻していったり、また生きることに前向きになっていく話になるかなと思ったんです。人の死によって我々は生かされているということもあると思うんです。 ■ 江口洋介「昔は若さでどうにか対抗できたけど、いまは圧倒されちゃうよね」 ――年齢の幅が広い現場はどんな雰囲気だったのでしょう? 上白石:志尊君と私の20代のコンビがいて、依頼人役は役者として大大先輩の方ばかり。こんなに年齢も価値観もバラバラな現場があるんだなって、毎日新鮮に思っていました。 江口:亜花里(上白石)と寺本の明るさにすごく救われているよね、物語の中でも。 上白石:控え室での会話もすごかったですね! 江口:かみ合ってるのかいないのか(笑)。それぞれの価値観がおもしろいんだよね、その人が生きてきた時代の話をしてくれるから。 上白石:すっごく興味深いお話ばっかりで。われわれは生命力を吸いとられないように、と。 江口:吸いとろうとしてた人がいたってこと!? 上白石:役としては病気と闘っているんだけど、みなさん生命力がみなぎっている方ばっかりで(笑)。 江口:めちゃくちゃ元気なんだよね(笑)。元気すぎて、死を宣告された役の人のほうが元気なんじゃないのってくらい。年配の方はふだんは落ち着いていらっしゃって物静かなのに、俳優としてのスイッチがバンって入る瞬間がある。そうやっていきなり本番にパーン!と入られると、昔は若さでどうにか対抗できたけど、いまは圧倒されちゃうよね。 上白石:目から発するエネルギーや圧が、もう違いすぎて!この目をこの距離で感じられてすごく幸せだなって思いました。 ■ 上白石萌歌「今回初めて知った曲だったので、十八番にしようかな」 ――本作の珍しい点といえば、毎回、キャストが昭和歌謡を歌うシーンがありますね。 上白石:選曲は大森さんがされたんですか? 大森:そうですね。僕からのリクエストだと思ってください(笑)。話の内容とリンクした曲を選ばなきゃいけないという事もありましたが、本当は最後に依頼人が聞きたい曲をリクエストされて、それを車の中で流すという設定を考えていたんですよ。 でも、これは本人が歌ったほうが説得力があるんじゃないかなと。歌わせないと、もったいないんじゃないかと思って、歌ってもらうことにしたんですけども、大正解でした。歌うって祈る行為に似ているところがあるじゃないですか。 まだ第1回と第2回でセットになっている最初のエピソードしか見ていないんですが、その第2回ラストの上白石さん の『アカシアの雨がやむとき』、あれはすばらしい。想像した以上にすばらしかった。 江口:なかなか手ごわかったです(笑)。僕もふだん歌を歌うんですけど、演じている気分の中で歌を歌うとなると、ギャップがあるんですよ。 上白石:わかります(笑)。 江口:出来上がってみると違和感はないんだろうけど、演じている時は「なんでこいつ、ここでこれを歌ったのかな」って、心情を考えちゃうんです。だからどういう心情でつなげようかと、第1回の『無縁坂』もすごく苦労しました。 「このフレーズは心情として歌えないだろう」とか、いろいろなことを思ったりして。上白石さんは絶対知らない曲ですよね。 上白石:脚本を読んで、「へ~こんな曲があるんだ」って知って歌い始める、みたいな(笑)。 大森:第1回はカラオケですが、第2回から設定としては歌っているのではなく、曲を流しているんですよ。それを表現として歌ってもらっているので、実はあそこだけ“ファンタ ジー”なんです。 江口:ファンタジーですね。確かに。 大森:ぜいたくですよね。上白石さんは、ああいう昭和歌謡を歌ったのは初めてでしたか? 上白石:私、昭和歌謡すごく好きなんです。 大森:やっぱり。似合いますもんね。 江口:「♪ア・カ・シ・アの~」って、こぶし入ってるの聞いてぞくっとしましたね。この年齢であのこぶしが決まるっていうのは。 上白石:いま昭和のポップスとかはやってるじゃないですか。私もすごく好きで。でも『アカシアの雨がやむとき』は今回初めて知った曲だったので、十八番にしようかな。 大森:絶対したほうがいい。 江口:残りますからね、歌は。人から人へ。 (後編へ続く)(ザテレビジョン)