<私の恩人>陣内智則、売れない悔しい日々…ジュニアのことも嫌いだった
そして、本番。やったネタは、舞台上にすりガラスを置いて、その向こう側で女装した僕が悩み相談をするというネタでした。すりガラスを置いたのも「リミテッド」時代の苦い思い出があったんで、お客さんの顔を見るのが怖かったんです。だから、すりガラスを使ったネタを考えたくらいやったんですけど、それが、なんと、ウケたんです。その流れで(関西若手芸人の登竜門)「ABCお笑い新人グランプリ」(1998年)の予選にも推薦してもらって、当時2本しかなかったネタを駆使して決勝に残り、優秀新人賞をいただきました。自分では絶対にやっていないだろうし、できないことを後押ししてもらった。その結果、見たことのない景色を見せてもらいました。 「ABC…」をとった後、真っ先に報告に行ったのがジュニアさんと新田さんでした。すると、2人とも同じ反応で「そら、そうやろ」と。意外な反応やったんですけど、見てくれていたんやというか、実は評価していてもらったんやというか、そこで今までのことが報われるというか。うれしかったですね。恐くてお客さんの顔も見られなかった僕が、今度、ラスベガス公演にチャレンジさせてもらいます。そら、感謝しかないです。ラスベガス公演、英語も覚えないといけないし、本当に大変ですけど、頑張りたいと思います。 でも、ラスベガス公演もそうですし、そもそも「リミテッド」時代もそうですし、その後の、いろいろな、いろいろなことも含め…、つくづく自分からしんどい方に行く人生やなと思います…。ただ、お世話になった方への恩返しは、これからも、もっと、もっと、しないといけないと思っています。今、NGKにいらっしゃる新田さんには、NGKで大きなイベントをやって、ご恩返しができるように精進していきたいと思いますし、ジュニアさんにもお返しをしないといけない。 ただ、ジュニアさんは同じ芸人という立場ですから、ある意味ライバルと思わないといけないでしょうし、恩返しというのはそぐわないのかもしれない。負けないようにという気持ちを持って、頑張り続ける。それが僕にできる唯一のことなのかもしれません。 (聞き手・文/中西正男/株式会社KOZOクリエイターズ) ■陣内智則(じんない・とものり) 1974年2月22日生まれ。兵庫県加古川市出身。92年、NSC大阪校に11期生として入学。同期には「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじらがいる。お笑いコンビ「リミテッド」として活動するが、95年に解散。ピン芸人に転身後は、映像や音声にツッコミを入れていく独自のスタイルを確立し、注目を集める。2011年に韓国語による韓国公演を開催。今年9月14日には英語を使った現地の観客向けの単独ライブを米ラスベガス「Tommy Wind Theater」で行う。現在、TBSテレビ「もてもてナインティナイン」「内村とザワつく夜」などに出演中。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年、大阪府生まれ。大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」に出演中。