トランプは「ウクライナを見捨てる」とは言っていない…それどころかトランプの対応が「良心的である」とすらいえるワケ
感情的なウクライナ応援の願望をこえて
ゼレンスキー支持派の方々の停戦合意への反発は、多分に感情的なものであるように見える。ウクライナの完全勝利を望むあまり、それ以外の結末を決して受け入れたくない感情を抑えることができないのである。 かなり問題なのは、一般人がそうした感情にとらわれているだけでなく、日頃から「専門家」と呼ばれている学者・ジャーナリストら言論人層が、大衆の感情論に迎合し続ける態度に固執していることだ。気に入らない他の言論人の言葉尻を捉えて感情的な態度で怒ってみせたりし続けている場合もある。 「ウクライナは悪いない」「国際秩序は維持しなければならない」という言説に間違いはないだろう。だが、だからといって、たとえどんなに悲惨な結末しかもたらされないとしても、ウクライナは永久戦争を続けなければならない、などとは誰にも言えないはずだ。 ただ「ウクライナは勝たなければならない」とだけ叫び続け、しかもウクライナの完全勝利以外の可能性を語る者を非難する運動に加担し、そしてただ戦場から遠く離れた日本で自分が拍手喝さいを浴びることを求めるだけの態度に終始するのは、果たして言論人として責任ある態度だろうか。 トランプ氏の登場は良い機会である。現実を見据えた言論活動とは何か、われわれ日本人も真剣に考え直してみるべきだ。
篠田 英朗(東京外国語大学教授・国際関係論、平和構築)