各社がホットモデルを続々と送り出していた懐かしき1970年代|麗しきスポーティーバージョンの時代 Vol.2
麗しきスポーティーバージョンの時代 Vol.2 流麗なフォルムを持つクーペボディであればスポーティーカーと見なされた1960年代から、エンジンやサスペンションなど、高性能な機構を盛り込んでこそスポーティーバージョンとなる1970年代。 カローラレビン、チェリーX-1・R、ギャランFTOなど、オーバーフェンダーで武装したホットモデルたち【写真6枚】 国民所得が上がり、自動車が身近な存在となったので1970年代は、1960年代と比べると、スポーティーバージョンの選択肢が一気に増えた。 上級クラスをカモる実力を秘めたスポーティーバージョンが多くのメーカーから送り出されているが、その筆頭に上がるのがB110サニー1200GXだろう。 セダンボディも用意されていたが、圧倒的に人気が高かったのは流麗なデザインのクーペGXである。 軽量ボディにSUツインキャブで武装したA12型直列4気筒OHVを積み、痛快な走りを見せつけた。OHVエンジンだが、高回転まで気持ちよく回り、俊敏な加速を引き出せる。FR車ならではの軽快なフットワークと正確なハンドリングも持ち味だ。意のままの軽やかな走りを存分に味わえた。 テクニックに応じて走りを楽しむことができるのもスポーティーバージョンのいいところだ。三菱もギャランGTOの弟分としてFTOを送り出した。1.6Lの4G32型直列4気筒SOHCエンジンにSUツインキャブを装着し、痛快な加速を手に入れている。このエンジンはランサー1600GSRにも積まれ、大ヒットした。 上級のスポーツモデルは4輪独立懸架のサスペンションを採用する時代になっている。だが、コンパクトカーをベースにしたスポーティーバージョンの多くはリジッドアクスルのリアサスペンションを受け継いでいた。だが、ラリーやレースで鍛えられているだけに、フットワークは軽快だ。エンジンパワーもほどほどだから、テクニックを磨くには最適だった。 一方、ぜいたくなDOHCエンジンを積んだホットバージョンも登場する。2代目のカローラとスプリンターに設定されたレビンと兄弟車のトレノだ。この時代、DOHCエンジンはレーシングエンジンと同じ意味だったから、衝撃をもって迎えられた。エンジンはセリカ1600GTなどに積まれていた1.6Lの2T-G型直列4気筒DOHCだ。 SUツインキャブが主流の時代に、レビンとトレノはキャブレーションもレーシング仕様と同様のソレックス2連装だった。 リアサスペンションが古典的なリーフスプリングだったこともあり、扱いづらいジャジャ馬のレッテルを貼られている。だが、公道では刺激的な走りを見せたし、モータースポーツの世界でも軽量コンパクトボディと高性能エンジンを武器に大暴れした。 また、マツダはモーターのようにウルトラスムーズな2ローターのロータリーエンジンを積むファミリア・ロータリークーペを発売している。ロータリーフィーリングと呼ばれた異次元の走りを安価に味わえたから、熱狂的なマニアを生んだ。これはマイナーチェンジでプレスト・ロータリーに進化した。1971年にはひとクラス上のロータリー専用車、サバンナも誕生している。 FF方式のスポーティーバージョンも登場した。その代表がチェリーやシビックなどのSUツインキャブ仕様だ。この時代、FF車は異端だった。フロントにメカニズムが集中しているためハンドリングに難があり、曲がらないクルマが多かったからである。その弱点を消すために、タックイン現象を利用して強引に向きを変えていた。 速く走らせるためには、それなりのテクニックが必要になる。だが、チェリーのX‐1とオーバーフェンダー装着のX‐1・R、ホンダ久々のスポーティーバージョン、シビックRSは小気味よい走りを披露し、FFスポーツの扉を開いている。レースの世界でもサニーやカローラとともに歴史に残る名勝負を演じ、ファンを魅了した。 1980年代はDOHC4バルブエンジンを積むスポーティーバージョンとターボ搭載車が主役に躍り出た。気負わずに痛快な走りを楽しめるスポーティーバージョンは、永遠のヒロインである。
Nosweb 編集部
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