【普段使いできるR.S.】ルノー・メガーヌR.S.300 EDCへ試乗 フェイスリフト 満たない興奮
最高出力300ps、最大トルク42.7kg-mへ増強
text:Simon Davis(サイモン・デイビス) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) 硬く鋭いR.S.トロフィーと同じく、より手頃なルノー・メガーヌR.S.300もフェイスリフトに合わせて6速MTが選べなくなった。その理由は、先日のR.S.トロフィーのレポートに記した通り。あまり前向きなものではない。 【写真】ルノー・メガーヌR.S. マイナーチェンジ 競合ホットハッチと比較 (133枚) ルノー・スポールの母国であるフランスでは、排気ガスの環境負荷に対する税率が一気に高くなった。6速デュアルクラッチATより6速MTの方が環境負荷が高く、課税額が一層大きい。選択肢から消えることになった、悲しい現実だ。 そんな気持ちを慰めるように、メガーヌR.S.のベースグレードでは馬力とトルクが引き上げられている。ヘッドライトとテールライトのデザインは新しくなり、インフォテインメント・システムとモニター式のデジタルメーターもアップデートされた。 1.8L 4気筒ターボガソリンのユニット自体はフェイスリフト前と変わらないが、最高出力は300ps、最大トルクは42.7kg-mへ増強されている。昨年までは280psと39.7kg-mだった。 その結果、メガーヌR.S.280だったグレード名も、メガーヌR.S.300へ変わっている。ほかに、メカニズム上での大きな刷新はない。 四輪操舵システムと、サスペンションの油圧バンプストップも従来どおり。よりアグレッシブなカップシャシーは、R.S.トロフィーのみで選択できるようになっている。R.S.300で選べるのは、よりソフトなスポーツシャシーのみとなる。
毎日の足に使いたいと思えるR.S.
メガーヌR.S.のなかで、一番乗りやすいのがR.S.300といえる。R.S.トロフィーでは、路面の隆起部分や舗装の剥がれを、エッジの効いた衝撃で容赦なく伝えてくる。だがR.S.300なら、もう少し手加減してくれる。 それでいて走行ペースを速めれば、ボディの引き締まった動きを感じることもできる。ほかのクルマが手元にあっても、近所への買い物にでも乗りたいと思える親しみやすさを兼ね備える。 これは、ホットハッチを毎日の足に使いたいと考える、多くのドライバーには好都合なはず。不足ない柔軟性と、上質さすら感じる乗り心地が手に入るのだから。 一方で、天気のいい日の山道でR.S.トロフィーなら得られる高い興奮に、R.S.300では迫れない。 R.S.300ではカップシャシーが選べないだけでなく、リミテッドスリップ・デフや強力なブレーキも付いてこない。気持ちを高ぶらせるアクティブ・スポーツデフも装備されない。 その事実は、スキルが試されるタイトコーナーで気づくだろう。四輪操舵システムは、とても機敏に積極的にクルマを旋回させる。しかしカップシャシーのような、食らいつくほどの熱意は感じられないのだ。 凍結しかけた路面の英国オックスフォードシャー郊外での試乗が、その印象を強めることになった。濡れた路面では、急激なアンダーステアは発生しないが、期待ほどのロケットダッシュは得られなかった。