「プレータイムが長い=偉い、ではない」エースの大ケガにも慌てない伊佐HCが語る、SR渋谷の強みとは
「あともう1勝……、欲を言えば2勝しておけば、昨日おとといはよく寝られたかなと思います」 【秘蔵写真10枚超】中学時代の八村が細すぎ!凄まじいオーラのジョーダン、在りし日のコービー、ワルすぎるロッドマン、高校時代の渡邊雄太、田臥勇太らの若き日も。 バイウィーク3日目の練習後、そう話す伊佐勉の表情は、言われてみれば少し気怠げだ。 21勝8敗で東地区3位。開幕以来上々の戦いぶりを見せていたサンロッカーズ渋谷に黄色信号が灯ったのは、1月下旬のことだった。 1月24日、滋賀レイクスターズ戦でエースのライアン・ケリーが左頬骨骨折の大けがを負った。エースの戦線離脱に追い打ちをかけるように、チームにはコンディション不良者が続出。直近の3試合は、14人の契約選手のうち3人が不在という状況だった。 ヘッドコーチの伊佐は、ケリーの欠場からバイウィークまでの8試合で「最低でも4勝」という青写真を描いていた。しかし、度重なるアクシデントの結果、勝ち星は3にとどまった。 伊佐はこの8試合を振り返る。 「選手たちはすごくがんばってくれました。人数も練習する時間も少ない中、普段やらない戦術をいくつか取り入れて、選手によっては慣れない持ち場でのプレーも指示しましたが、遂行力が素晴らしくて。(前節の)三遠戦も、両試合ともに残り5分くらいまではしっかり勝てるゲームをしていましたし、チームとしてすごく成長できたと思います」
エース欠場でも、いつもどおりの戦いができる理由
エースの欠場でチームが総崩れし、悲惨な状況に陥る――。”チームスポーツあるある”と言っても過言ではない事象は、今季のSR渋谷にはおそらく発生しないだろう。伊佐も「メンバーがいないというのは事実ですけれど、そこが負けの原因ではないと言い切れるくらい、戦術通り戦えていた」と力を込める。 「全治未定」とリリースされたケリーは、現在故障者リスト入り。時世柄、新たな外国籍選手との契約にも具体的な目処が立っておらず、2月10日の秋田戦から欠場中のジェームズ・マイケル・マカドゥが、バイウィーク明けに復帰できるかも微妙なところだ。 それでも伊佐はチームが備える地力を信じ、泰然自若と構える。 「自分たちが持っているディフェンスの手玉で、相手にアジャストしながらやるしかないという感じですかね。 スタイルは大きく変えられないですし、変えようとは思っていません。ライアンがいなくても、ディフェンスの組み合わせを工夫して、相手や自分たちの状況を見極めて戦術的にプレーすれば、どのチームとでも戦えるかなっていうのは、ここ数試合で証明済みなので。 レギュラーシーズンはあと何十試合もあります。うまく調整して勝ち星をしっかり増やしていけば、チャンピオンシップを狙える位置にいるんじゃないかと思います」 ヘッドコーチに正式就任した昨シーズンより、伊佐は明確な使命を持ってその業務を遂行している。 それは、サンロッカーズというクラブの新たな文化を作ることだ。 SR渋谷の前身は日立のバスケットボール部。社員選手たちは社業を優先し、あくまで部活動としてバスケットに取り組んでいた。 勝敗やチケット収入が報酬に影響することはなく、会社の外にファンを増やす必要もない。実業団選手として、ある意味気ままにプレーしていればよかった。 しかしBリーグが開幕し、プロ化をしても、チームの雰囲気は実業団時代からなかなか変わらなかった。 この状況を憂えたゼネラルマネージャーの大江田孝幸は、琉球ゴールデンキングスのヘッドコーチを契約満了となった伊佐に「クラブの文化づくりを手伝ってほしい」とオファーを出し、伊佐もこの「文化づくり」というミッションに惹かれて、SR渋谷に加入した。Bリーグ2年目、2017年のことだった。 「僕自身がプロクラブから来たこともあって、最初は『やっぱり元企業チームだな』っていう感じはありましたね」。伊佐は加入当初をそう振り返る。